• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

官邸前のデモは「無難」。だから効く

2012年7月20日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今月末に官邸前のデモを見に行くつもりでいるのだが、その前に感想を述べておきたい。

 なぜ、自分の目で見る前に原稿を書くのか、疑問に思う人もだろう。
 が、私としては、ナマで見た景色に動かされる前に、現状で考えていることを書き留めておきたいのだ。

 デモのような集団行動は、巨大な心理的圧力を備えている。
 当然と言えば当然だ。

 人が集まることの効果の大きさを知っているからこそ、人々はデモを企画するのだし、規制する側も、デモのもたらす影響力の底しれなさを恐れるからこそ、その拡大を阻止せんとしている。

 包囲されることになる霞が関の関係者も同じだ。
 彼らとて、人の波の影響から無縁ではいられない。

 数万の人間の渦を目の前にして、霞が関の人々は、おそらく、日常の判断とは別の感慨を抱くことになる。で、その感慨は、彼らの考えを少しずつ動かすはずなのだ。

 結局、ひとつの場所に集まった人々は、集まったというその事実を通じて、ものの考え方の前提に当たる部分を変更して行く。
 と、集まった人間たちの思考は、結果として、ひとつの実体を獲得するに至るのである。

 私自身も、実際にデモの中を歩いたら、数万人規模の人間の群れが醸し出す圧力に影響を受けるはずだ。どっちに転ぶのか(つまり、昂揚感を感じるのか疎外感を感じるのか)は、歩いてみないとわからないが、いずれにしろ、私は傍観者としての視点を失うだろう。

【注】「大飯原発再稼働に反対する首相官邸前抗議」は「行進」ではありません。主催者からの注意はこちら

 そんなわけなので、ここでは、デモの輪の中に入る私が、デモの当事者(反対派であれ賛成派であれ)になってしまう前に、現状の状態で考えているあれこれを書いておくことにする。あの時のオレは、何も知らなかったとかなんとか、あとで笑うことになるかもしれないが、そこはそれだ。何も知らなかった時に考えていたことは、それはそれで価値を持っている。というよりも、もしかしたら、われわれの判断は、経験に毒される前の方が、純粋であるのかもしれない。

 私は、今回の一連のデモを、感心して眺めている。
 単純な話、こんな時代に万を数える人間を集めただけでも立派だと思っている。
 なにより、毎週頭数を増やしながら、一人の負傷者も出していない点が素晴らしい。
 逮捕者もゼロ。これも驚異的だ。
 器物損壊や略奪の噂も聞こえてこない。
 小競り合いや熱中症の話も皆無。
 ゴミのポイ捨て映像がネットにアップされることさえない。
 なんというお行儀の良さだろうか。

 三百人規模の高校生の修学旅行だって、もうすこしカオスな部分を残している。高校生がそれだけ集まれば、配られた弁当の人参を路上に廃棄する生徒が、少なくとも五人や六人はあらわれる。進学校でも底辺校でもこの比率はそんなに変わらない。

 それが、官邸前に集結した数万人の老若男女は、特に目立った悪さをすることなくコースを無事歩き通している。しかも、時間通りに粛々と解散した後には、ほとんどまったくゴミを残していない。こんな見事なデモがどこの世界にあるだろうか。

 おそらく、国際標準と照らし合わせて、これほど無害なデモはほかの国では見られないはずだ。

「ニポン人はイワシのように整然と動く」
「見ろ、人が少しもゴミのようじゃない」

 素晴らしい。われわれは自分たちの民度の高さを誇って良いはずだ。

 さてしかし、一連のデモにおける参加者お行儀の良さについて、主に年配の人々が違和感を表明していることもまた事実ではある。

 彼らは不思議がっている。

「なぜジグザグに行進しない」
「信じられない。おとなしすぎる」
「葬列かよ」
「気迫とか覚悟とか闘志とかがまったく感じられない」
「目的が曖昧だ」
「リスクを冒していない」

 言わんとしているところは、わかる。

コメント79

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「官邸前のデモは「無難」。だから効く」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長