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今日はうな重、それともkaba焼き?

2012年7月27日(金)

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 ウナギの稚魚が3年続きの不漁で、小売価格が高騰しているのだそうだ。
 ここまではわかる。
 よくわからないのは、不漁が深刻で、売り上げや市場価格をどうこう言う以前に、資源の枯渇が心配されているという話だ。

 資源の枯渇?
 ウナギの稚魚の漁獲が、養殖ウナギを含むウナギ全体の資源の問題にどう関わっているというのだろうか。意味がわからない。それに、「稚魚の不漁」という言い方自体、なんだか奇妙なお話に聞こえる。

 ところが、調べてみると、ウナギの流通と生産量は、稚魚の漁獲が支えている。われわれが食べているウナギのほとんどは稚魚の時代に捕獲して、養殖場で育成したものだというのである。

 なんと。
 知らなかった。うむ。うかつな話だ。
 私は、稚魚は稚魚のカタチで食べる好事家のために捕獲されている特別な食材なのだというふうに思い込んでいた。
 が、そんなはずはなかった。
 稚魚は、年々肥大化するウナギ需要をまかなうために、年々歳々大量捕獲されていたのである。
 われわれのウナギ生活は、組織的な小児誘拐の上に成立していたということだ。

 いずれにしても、われわれが「養殖ウナギ」と呼んでいるウナギのほとんどは、実は完全養殖ではなかった。
 ちなみに、完全養殖とは、成魚から採卵して、その卵を孵化させた上で成魚に育成することを言う。つまり、産卵、受精、から、孵化、成長、産卵に至るすべての生活サイクルを人工環境の中で制御することを以ってはじめて「完全養殖」と呼ぶわけで、現在わが国で行われている養鰻は、一番最初の段階の稚魚の確保を天然資源に頼っている以上、完全養殖とは呼べないのである。

 振り返ってみるに、私が子供だった頃、ウナギは高級品だった。滅多なことで庶民の口に入る食べ物ではなかった。
 だから、日活の映画では、登場人物は、何かあるとウナギかビフテキをおごる決まりになっていた。ウナギは、そういう格式のある食べ物だった。

 そのウナギが、いつの頃からか、1000円で食べられるメニューになり、スーパーの店頭に大量陳列されるようになったのは、養殖が成功したからで、ということはつまり、マグロやヒラメみたいな天然魚の事情はいざしらず、ウナギについては資源の心配は不要になったのだと、そう思い込んでいた私は、実になんとも、どうしようもない粗忽者だった。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「今日はうな重、それともkaba焼き?」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師