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英雄の愚行に拍手はすまじ

2012年8月24日(金)

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 竹島をめぐって一悶着あったと思ったら、今度は尖閣諸島で騒ぎが起こっている。

 私の抱いている感触では、この種の騒動はオリンピックと連動している。なんというのか、四年に一度、五輪が開催されるタイミングになると、わが国を含む極東アジアの周辺国は、ナショナリズムをめぐる小競り合いを繰り返している気がするのだ。

「競技なのか? これは」

 と、毎度私はそんなふうに感じる。

 ロンドン五輪で活躍したアスリートの皆さんが、領土問題を誘発しているとか、そういうことを言いたいのではない。

 これは政治の問題だ。

 スポーツに政治を持ち込むことを控えるマナーは、いまや国際社会の常識になっている。が、その一方で、政治にスポーツの余韻を持ち込むことはその限りではない。少なくとも極東アジアでは、ごく普通に励行されている。

 今回も同じ展開だ。

 おそらく、オリンピックを機に一時的に国家意識が昂揚すると、政治家はそれを利用する誘惑に駆られるのだと思う。

 気持ちはわからないでもない。国民が熱狂している姿を見れば、政治家たるもの、やはりその情熱を政治に向けてほしいと考えるはずだからだ。というよりも、より実態に即した言い方をするなら、政治家は、常に国民感情を利用する機会をうかがっているものなのだ。なんとなれば、彼らにとって、政治とは、国民感情を集票行動に結びつける回路それ自体を意味しているからだ。

 で、李明博大統領はそれを実行に移した。オリンピックの国家的狂騒の中で、日韓両国のナショナリズムの火種であるところの竹島(韓国の呼び方では「独島」)に上陸したのである。

 彼の企図が成功を収めたのかどうかは、まだわからない。

 今回の一連の行動を通じて一時的に上昇した支持率が、このまま、めでたく彼の政治基盤を強化することになればハッピーエンドということになるのだろうが、そううまく行くのだろうか。ともあれ、この種のパフォーマンスによる支持率は、テレビの視聴率調査でいうところのワンクール(三カ月)分しか続かない。むしろ、この先、大統領は、自身が火をつけた国民感情にひきずられて、迷走するのかもしれない。どっちにしても、こういうやっかいなものに火をつけた以上、先行きはより不透明になるだろう。

 しかしながら、李明博氏は、これまでのところ、少なくとも、注目を集めることには成功している。

 と、メディアが飛びつく。
 彼らに深い考えは無い。

 ハエでもバッタでも風に乗ったゴミでも、目の前に動くものがあれば飛びつくのがカエルの本能で、そのDNAを相続しているメディアの人々は、事態が動いているように見えれば何であれ食いつきに行く。そういう稼業なのだ。

 ナショナリズムを刺激するタイプの話題は、スポーツであれ領土であれ、メディアにとって「良いネタ」だという意味で同じものだ。ましてオリンピックの時期、番外競技として領土プロレスが開催されている以上、その鉄板の人気競技に紙面を割かない理由は無い。なんといっても、数十年来のロングラン興行なわけだから。

 不謹慎な見方だと思う人もあるだろうが、私はこの度の一連の領土をめぐる騒ぎを以上のような枠組みで考えている。結局のところ、このたびのやりとりは政治家が支持率を稼ぐために仕掛けた騒動であり、メディアがそのアジテーションに乗っかって火事場の号外仕事にあずかっている姿なのですよ、と。

 もちろん、領土が領土であるための論拠やその正統性をめぐる議論は、今回のなりゆきとは別に存在している。

 が、今回は、その議論に至る手前のところで、「騒動」そのものがアジテートされ、宣伝され、利用され、消費されている。そして、領土が領土であることをめぐる議論は、「騒動」の熱気に吹き飛ばされて、どうせどこかに消えてしまう。それもそのはず、「騒動」にかかわっている人々の真の狙いは、領土そのものではなくて、その帰趨を問題にすることで起こる「熱気」と、その「熱気」がもたらす巨大な「国民感情」だからだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「英雄の愚行に拍手はすまじ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士