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考え抜かれた要求と国王の騙し討ち

抵抗する[19]

2012年9月6日(木)

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ロンドン進軍

 このようにして叛徒たちは、ロンドンに向かった。そして城門できびしく警護されているロンドンの町は、六万から一〇万と言われる大群衆にとり囲まれることになった。ここで注目されるのは、ロンドンの市民たちがこの叛乱に同調する姿勢を示したことである。「ロンドンの職人たちは、叛乱農民と共同戦線を張り、叛乱軍が戦わなくても城内に侵入できるように、内側から市の諸門をこじあけようと計画した」[1]のだった。

 しかし叛乱軍に同調したのは、職人たちだけではなかった。市の参事会員であったギルドの代表たちが、ひそかに叛乱軍と連絡を取り合っていたのである。そして魚商人のギルドが監督権をもっていたブリッジ区と、肉屋や鳥屋のギルドが監督権をもっていたオールド・ギッドの門が開かれ、叛乱軍はやすやすとロンドンに入城できたのだった。

 市の参事会員のホーンは、ロンドンの全市民は一揆を支持しており、叛乱軍がロンドンに進軍した際には、「父が子供たちによって、友人がその友人によって迎えられるように、温かく、かれらは市に迎えられるだろう」[2]と、タイラーに告げていたらしい。

 ロンドンに入城した一揆軍は、市を秩序正しく支配した。まだ若い国王は、貴族たち、それと母親とともに六百人の兵士に護衛されていただけだった。地方に軍隊はいたが、この大群の叛徒を相手にしては手遅れだった。タイラーたちは国王に要求をつきつけた。今度の要求は、前のような素朴な要求ではなく、政治的・経済的に考え抜かれたものだった。この要求は次の四カ条である。

新たな要求

一、すべての人々は隷属から解放されるべきであり、今後は農奴は存在すべきではない。

二、国王は身分のいかんを問わず、犯されたあらゆる種類の行動や暴動を許し、犯されたあらゆる種類の反逆、重罪、違反、略奪を許し、かれらに平穏に暮らすことを許すこと。

三、すべての人々は今後イングランド王国のあらゆる州、市、自治邑、町、定期市、市場、およびそれ以外の場所において、売買する権利を認められるべきこと。

四、農奴土地保有権に基づいて保有されていた土地は、一エーカーについて四ペンスの地代だけで保有を続けるべきこと[3]

 第一条は、農奴身分の廃止を求めたものである。ボールの説教のように、本来の身分的な差別は存在すべきでないと農民たちは考えていたのであり、これが認められることで、農民は領主と対等の身分になれるはずだった。そして領主のあらゆる搾取から解放されることになるだろう。

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「考え抜かれた要求と国王の騙し討ち」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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