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ベビーカーが載せているのは「マナー」ではない

2012年9月7日(金)

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 この春から、週に2回ほど電車に乗って出かける先ができて、そういう境遇になってみると、あらためて気づかされることがいくつかある。

 私はこの20年ほど、定期的に通う先を持っていなかった。

 だから、混んだ電車に乗ること自体、かなり久しぶりの経験だったのだが、驚いているのは、夕方の通勤車両の中の乗客が、誰も彼も、かつてよりひどくギスギスして見えることだ。スマホや携帯電話を操作している者が約半数。残りは、中空を睨んでいるか、でなければ、かたく目を閉じている。

 なんだか暴動前夜みたいな雰囲気だ。

 そんなふうに感じるのは、私が浮世離れしているせいなのだろうか。あるいは、私が若者だった頃の通勤客と比べて、21世紀の乗客はより巨大なストレスに晒されているということなのか?

 この点について話をすると、出勤族の答えはニベも無い。

「何時頃の何線に乗ってるんだ?」
「月曜と水曜の昼過ぎの地下鉄南北線。で、帰りは時々買い物ついでに山手線方面に回ってみたりする」
「…その路線のどこがギスギスしてるって言うんだ?」
「いや、ほら、午後6時過ぎの山手線だとかは、なんだか企業戦士運搬車両みたいな空気じゃないか。おっさんばっかりだし」
「甘いな」
「何が甘いんだ?」
「まず南北線だけど、あれはオレに言わせれば都会の電車じゃない。観光地のケーブルカーみたいなもんだ。牧歌的だけど採算がとれてない。夕方の山手線はそこそこに混んでるけど、乗客はイライラしてない。むしろ上機嫌だぞ」
「そうか? だって、みんなえらく暗い顔してるぞ」
「朝7時台のJRに乗ってみろよ。ギスギスとかイライラっていう段階じゃなくて、乗客の99パーセントは生命力ゼロだぞ」
「……ちなみに、残りの1パーセントについて聞かせてくれるか?」
「痴漢だ。あいつらは元気だぞ。あの時間の電車は痴漢以外の人間には何のメリットもないからな」

 そんな空間にベビーカーを持ち込むことについて、8月25日の朝日新聞が「ベビーカー問題」として論じていた(記事はこちら)。

「ああ、あれな。思いやりとかマナーとか、誰に向かってお伽話をしてるんだって話だよ」
「どういう意味だ?」
「崖っぷちに立ってる人間同士をつかまえて、どこを譲り合えって言うんだ? どっちかが飛び降りない限りスペースなんかありゃしないんだぞ」
「……」
「それに、マナーっていうのは、多少とも人間らしい環境の中に置かれた者に向けて用いる言葉であって、午前十時前の東京の通勤電車に乗っている人間に求めて良いものじゃないぞ」
「そうかなあ」
「世界中のどこの刑務所を覗いたってあんなに狭いスペースに何百人の人間が詰め込まれてるところは無いぞ。まるでガス室じゃないか」

 なるほど。
 最初に記事を読んだ時、私は、第一感で、こういう問題に関して賛否があること自体、どうかしていると思ったのだが、そう考えた私は、世間知らずだった。

 結論について語る前に、とりあえず、以下に、私が記事を読んだ時の初見の感想を紹介しておくことにする。

コメント158

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「ベビーカーが載せているのは「マナー」ではない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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