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激しく教会批判を行ったウィクリフ

抵抗する[20]

2012年9月13日(木)

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封建国家の有機体思想

 ジョン・ボールの説教とタイラーたちの要求に示されている当時の抵抗思想をまとめてみると、農奴制の廃止と身分的な不平等の廃止、教会財産の解体と、自由な農業と商業の要求の三点に絞ることができるだろう。この思想は、この一揆が目指していたものをはっきりと示している。既存の階層構造の破壊と、自由の確立である。

 このことは、この思想が社会の中間層が、封建社会を解体しながら、自由な活動をするための条件を確保しようとしていたことを示すものである。国民の大半を占める農民層に、ジョン・ボールなどの下級の聖職者、そして貴族的な層の一部が荷担して、こうした叛乱が発生したものと思われる。

 封建社会は伝統的に三つの階層で構成されるものとみなされていた。祈る者、戦う者、耕す者である。第一が聖職者であり、第二が貴族であり、第三が農民である。聖職者は祈ることで国家とすべての人を支え、貴族は祈る者と耕す者を保護し、耕す者はすべての人の食料を生産する。フランスでは第一身分、第二身分、第三身分と、明確に法的な階層構成として表現されたのだった。

 この三階層のイメージは封建社会を貫いており、それはしばしば有機体的な国家観として表現された。社会の階層は人体で表現され、国王が頭、貴族は手、聖職者は胸、農民たちは足であった。そして足である農民たちだけでは生きられないのは、人間が頭や手や胸なしで生きられないのと同じだとされた。「このように考えられた社会は、人体になぞらえられた社会と同じように、変革を許す要素をいっさいもたなかった」[1]のである。

内部からの抵抗思想

 このように階層を身体の器官として表現するイデオロギーは強い力を発揮しつづけた。しかしこのイデオロギーも万全ではなかった。階層の内部からこれを批判する思想が登場していたからである。ワット・タイラーの叛乱においても、市民たちと聖職者や貴族階層の一部が、思想的にも実践的にも叛乱を支持していたはずである。彼らは既存の階層構造を打破することのうちにしか、社会的な進歩はないものと考えていたのである。

 このような内部からの階層構造の批判は、すでに著名な聖職者のうちからも生まれていた。そのことをウィクリフの思想から調べてみよう。ウィクリフは一三三〇年代にイングランドのワークシャーで生まれ、生涯の大半をオックスフォード大学で教授として働きながら過ごした。当時の一流のスコラ哲学者だった。死後に異端として断罪されたが、「つねに政治権力の庇護のもとにあり、そのゆえをもって、安らかな最期を迎えることができた」[2]のだった。

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「激しく教会批判を行ったウィクリフ」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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