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いつかゴミになる日まで

2012年9月14日(金)

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 アグネス・ラムの写真集が売り出されるのだそうだ。
 値段は3990円。
 ん? アグネス・ラムを知らない?
 たしかに、40歳より年少の皆さんは、名前を聞いたことがないかもしれない。

 簡単に説明しておく。アグネス・ラムは、1970年代に一世を風靡したグラビアアイドルの元祖みたいな人だ。CMや雑誌の表紙や電車の中吊りに、一時期は、顔を見ない日がないほどメディアに大量露出していたものだ。

 もっとも高校生だった私たちが見ていたのは必ずしも顔だけではなかった。というのも、彼女は、多くの場合、水着姿で登場していたからで……と、これ以上の解説は野暮だ。やめておく。どうせ言葉では説明できない。

 詳しくはウィキペディアを読んだうえで、Googleの画像検索でもひとあたり眺めてみてください。会社にいるなら後ろに気をつけて。

 ……と、精一杯親切に紹介してみたところで、おそらく、アグネスをはじめて見る人たちは誤解をしているはずだ。私には手に取るようにわかる。あなたたちは、典型的な偏見を抱いている。

 似たような水着写真のサムネイルが、画面上にズラリと表示されるのを見たら、誰だって
「要するにこういう感じで消費された人なんだな」
 と思う。それは仕方のないことだ。どのみち、本当のキモのところは、同時代に同じ空気を呼吸していた者にしかわからないのだ。

 あの時代のあの環境の中で、彼女の写真が、いかなる層に支持され、放課後の教室でどんなふうに迎え入れられていたのかは、1970年代に高校生だった者にしかわからない。

 だからもうこれ以上の説明はしない。誤解している皆さんは、一生誤解していれば良い。われわれが理解していると思っているその理解にしたところで、あの時代に蔓延したもっともポピュラーな誤解であったに過ぎないわけだし。

 それにしても3990円という値段は消費者を舐めている。
 われわれは舐められている。
 業界の人間は、「オヤジは何でも買う」と思っている。
 こんなことを許していて良いのか?

 ……でもまあ、買うヤツは買う。
 舐められて、足元を見られて、タカをくくられて、半笑いの顔でぞんざいな営業をかけられながら、それでも買うヤツは買うのだ。

 実際に、私は、買いそうな男の顔を四個ほど思い浮かべることができる。その顔は、「ウルトラQ」のDVDボックスを予約購入したメンバーと重複している。

コメント43件コメント/レビュー

30代既婚共働きの女性です。女性にコレクター癖がないというコメントがありますが、私はアメリカのドラマのDVDを収集しています。マイナーなメーカーの作品も正規ルートで買います。次回作を作って欲しいからです。最近は、子供の頃親に捨てられた漫画やCDを買ったりしていますが、思い出補正だったなと思うものもあれば、今もやはり良い作品だったと思えるものもあります。夫婦そろって置き場所に困ってきていますが。とはいえ、似たようなコンテンツ、同じ画像を使用しただけのグッズは買いませんし、二軍ラインでデジタル化できるものはほぼ圧縮してデータ化しています。「大量のデータを効率的に圧縮できている自分」が気持ち良いからかもしれません。母と嫁がコレクターの敵というのは、自分で家の掃除をしていない人の言葉なのでは。版型が統一されているメディアはまだしも、細かい雑貨は掃除機をかけるときに本当に邪魔。自分のですらそう思います。(2012/09/18)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「いつかゴミになる日まで」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

30代既婚共働きの女性です。女性にコレクター癖がないというコメントがありますが、私はアメリカのドラマのDVDを収集しています。マイナーなメーカーの作品も正規ルートで買います。次回作を作って欲しいからです。最近は、子供の頃親に捨てられた漫画やCDを買ったりしていますが、思い出補正だったなと思うものもあれば、今もやはり良い作品だったと思えるものもあります。夫婦そろって置き場所に困ってきていますが。とはいえ、似たようなコンテンツ、同じ画像を使用しただけのグッズは買いませんし、二軍ラインでデジタル化できるものはほぼ圧縮してデータ化しています。「大量のデータを効率的に圧縮できている自分」が気持ち良いからかもしれません。母と嫁がコレクターの敵というのは、自分で家の掃除をしていない人の言葉なのでは。版型が統一されているメディアはまだしも、細かい雑貨は掃除機をかけるときに本当に邪魔。自分のですらそう思います。(2012/09/18)

40年前は週刊誌を買わないとオナニーが不可能だった。現在はグーグルの画像検索でだれでもできる。グラビアは売れないと思う。(2012/09/18)

アグネス・ラムの写真集3990円は高いんだ...本題と関係なく印象に残ったのがこの事実です。1500円ではありがたみがないんじゃないの?と思うのはひと世代下だからでしょうか?(2012/09/18)

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三品 和広 神戸大学教授