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ひらがなで語れない日本野球

2012年10月5日(金)

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 ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)に出場する日本代表チームの監督に、元広島カープ監督の山本浩二氏が就任することが決定した。

 この件について、さきほどから、適切な言葉が見つからずに苦慮している。

 山本浩二氏の人物像や能力について疑念を抱いているからではない。落ち着き先として見るなら、これはこれで立派な人事だと思っている。というよりも、昭和40年代から50年代のプロ野球に熱狂した者の一人である私にとって、山本浩二氏は、十分に大きい名前だ。思いつきの批判など、とてもできない。

 私が考えあぐねているのは、監督の個人的な資質についてではない。
 わが国のプロ野球機構のガバナンスについてだ。
 だからこそ私は、単純に「おめでとう」と祝福することができないのだ。
 
 いま、私は、「ガバナンス」という横文字を使ったが、元来、私は、この種の横文字を好まない。それどころか、「ガバナンス」だとかいった赤毛組織論用語を使う人間は、基本的には信用しないことにしている。

 ところが、どうしたことなのか、私は、時に、無意識のうちに、これらの言葉を使っている。ガバナンス。アカウンタビリティ。コンプライアンス。リスク・マネジメント。自分の書いたテキストを読み返してみると、私は、かなりの頻度でこれらの用語を使ってものを考えている。

 どうして、和食の料亭の板前が洋包丁を使わねばならないのか。それほどまでにわれわれの厨房に運ばれてくる食材は、アブラぎってきているのだろうか。

 個人的な自覚としては、プロ野球や大相撲について原稿を書く段になると、とたんに横文字が増える。

 おそらく、そのあまりにもルーズな意思決定過程や、どこをつついても責任の所在が見えてこない曖昧な統治機構に対する苛立ちが、横文字を呼び寄せるのだと思う。ダメな小説を読んだ時に限って文芸用語を振り回したくなるあの感じに近い。

「これ、アンチ・ロマンのつもりなのか?」
「違うよ。盛り上げようとして失敗したアンチクライマックスの典型だよ」
「意識の流れのつもりで書いたところが、流れて出たのは生理的な妄言でしたぐらいか?」
「しかも、文体が下水管」
「下水妄言小説だな」

 今回のWBCに関しては、そもそも機構と選手会の足並みが揃っていなかった。
 以下、簡単に経緯を振り返ってみる。
 2011年の12月、都内で招集されたプロ野球オーナー会議において、日本プロ野球機構(NPB)およびセ・パ12球団は、第三回WBCに参加する方針を決定し、その旨を内外に発表した。
 しかしながら、この時点で、選手たちが招集に応じるかどうかは、まだ、はっきり決まっていなかった。
 方針が出されたのは翌年の4月だ。
 2012年4月、労働組合日本プロ野球選手会は、大阪市内で開催された臨時大会において、不参加の方針を全員一致で採択する。これによって、労使の分裂が明らかになったわけだ。(ニュース記事はこちら)。

 WBCには、整理されていない課題が数多く残っている。以下、列挙する。

a.収益構造の歪み:チケット収入、放映権料、スポンサー収入、グッズ収入のすべてのが、大会運営会社に吸収される。
b.利益配分の不公平:スポンサー企業の約7割が日本企業であるにもかかわらず、収益の分配はアメリカ側の66パーセントに対して、日本側は13パーセントと決められているという。この分配率は、第一回大会の前に取り決めたもので、これまで二回の大会で日本が優勝したのに、見直されていない。
c.参加選手の偏り:開催地である本国のMLB(メジャーリーグ機構)がアメリカ人選手の派遣に消極的。チームによっては選手の派遣を明確に拒否している(ニューヨーク・ヤンキースなど)。
d.レギュレーションの偏り:対戦スケジュールが偏向していて、同じ相手との対戦が何度も繰り返される。ちなみに第二回大会では、日本と韓国は5回も対戦している。
e.開催国における知名度の低さ:開催地アメリカでの周知宣伝活動が消極的。マスメディアの関心も低く、報道量も小さい。アメリカ人のほとんどがWBCの開催を知らないと言われている。

 これらの問題点は、第一回大会の開催時から指摘されていた。それゆえ、選手の間には、不満がくすぶっていた。

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「ひらがなで語れない日本野球」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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