• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「偉人たちも庶民」なんて当たり前だろう?

2012年10月15日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞した。
 受賞の第一報がもたらされた10月の9日以来、テレビの情報番組はノーベル賞一色になっている。

 出稿量がいかにも多すぎる気はするが、その点について、私は、特に大声で苦情を述べようとは思っていない。

 久々のグッドニュースだ。現場が騒ぎたくなる気持ちは理解できる。それに、ご祝儀報道が多少過剰になったからといって、誰が傷つくというものでもない。いじめ自殺の隣近所をつつき回したり、国境紛争に関連してくすぶっている国民感情を煽りにかかるテの報道に比べれば、同じメディアスクラムでも、ずっと害は少ない。

 ただ、気になるのは、配信されてくる映像の内容が、時間を経るにつれて、受賞者周辺のプライバシーを晒す覗き見趣味に偏してきている点だ。

 独自ネタを追求する中で、各局とも、賞や研究そのものとは縁の薄い「人間的な」部分の取材に重心を移しつつある。
 これは、画面のこちら側から見ていて、気持ちの悪い変化だ。

 どうして、ご本人があえて表に出していない部分について、放っておいてさしあげることができないのか。いつも思うことだが、有名人だからといって、誰もが私生活を売りに出しているわけではない。「公人」に相応の責任があるのだとしても、その範囲にはおのずと限界があるはずだ。

 誰もがお調子者の同級生の放言を笑って受け止められるわけではないし、古い同僚の中にはウソつきだって混じっている。そもそも裏を取っていないエピソードは、まるっきりの捏造かもしれない。そう思えば、いくらめでたい席の話とはいえ、明らかにして良いこととそうでないことの区別は、当然、あってしかるべきではないか。

 今回受賞した山中教授は、魅力的な人だ。
 ふつうに話を聞けば、それだけで番組になる。
 奇をてらう必要はない。

 奇人ぶりを演出しなくても、十分にキャラは立っているし、キャスター主導で愛妻物語を紡ぎにかからなくても、並んでしゃべっている姿を見れば、大方のところは見当がつく。
 目に見える部分から見える以上のところに踏み込んだ取材は、悪趣味だ。
 
 が、取材陣はあくまでも話を引き出しにかかる。
 研究の過程にはどんな挫折があり、博士ご本人にはどんな弱点があったのか。家庭では、奥様に対してどのような態度で語りかけているのか。聞き手の記者たちは、質問を重ねながら、優秀な山中教授をなんとかして「凡人」の境地にひきずりおろそうとしているように見える。

 そうなのである。昨今の、「偉人」の扱いを見ていて、私がいつも疑問に感じるのは、テレビや雑誌のクルーが、あらかじめ、頂点にいる人々の弱点や挫折をクローズアップする意図で話を聞こうとしているように見える点なのだ。

 おそらく、悪気があってのことではない。
 彼らは、ただ、「キャラクター」を引き立たせようとしているだけなのだと思う。

 が、なぜなのか、21世紀的な「人となり」報道においては、「弱点」や「なさけなさ」の描写から説き起こす語り口が定型になっている。それゆえ、取材陣は、人物譚の定型にハメこむ材料を揃えるべく、まず「弱点」の収集にとりかかる次第なのだ。

コメント51件コメント/レビュー

要は、あなたが種々の報道を見てそこからそのような情報の汲み取り方をしたということでしょう。同じ報道を見て「やっぱり凄い人だ」と思う人や「オレも勉強しよう」と思うに至る人だって無数にいるはずだ(ウチの息子や、会社の同僚達はそういう人間が圧倒的に多い)。あの報道を見てそれが偉人を凡人として扱い、ある種の”冴えない自分”の自尊心の保護や向上心の毀損、あるいは教授本人への敬意を欠いているということしか汲み取れないのであれば、それは貴方のくみ取りのスキルがそこにそのまま表れているという事ではないのか。報道かくあるべし、シカジカの報道の方法が視聴者の内面におけるシカジカの効果を約束する、なんて考えているとすれば、その方がよっぽどおめでたい話であるし、大きなお世話な話であるし、視聴者を愚弄しはいないのか。そして、あなた(小田嶋氏)自身が山中教授や田中耕一氏について、本エッセイで語るという事自体もまた、貴方自身が指摘してみせる「小田嶋氏自身に理解できた(事柄)」という意味での彼らの凡庸性(凡人性)の投影を犯している可能性もまた十分以上にあるでしょう?いいですか?それが特定の人物であれある学問についてであれ、それを著する人や取材する人が誰であれ、それがどれだけ硬い専門書であれ柔らかい低俗雑誌であれ、そこから何を引き出すかは読む人間に託されていることです。そこでは常に正しい読みはなく”誤読”が担保されているのみなのです。その誤読をいかに自分の人生の中で”正しく”活用するか、そのスキルを涵養するほうがはるかに大切です。それは、様々なレベル多様な確度からなるものに、その権威にかかわらず忌憚無く触れ続けるより涵養されることはありません。小田嶋氏が書いていることは、小田嶋氏の読み、でしかない。はっきり言えば貴方のコンプレックスと偏向の発露が多分に盛り込まれた読みの披瀝でしかありません。その読みを、いかに反転させていくかということについてまるで書かれていないから、一個人の凡庸なマスコミ批判の一例以上の域も社会的価値も発揮されていないのです。小田嶋氏が書いていることはそれ自体によって自身が書いていることを体現しているに過ぎません。(2012/10/23)

オススメ情報

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「「偉人たちも庶民」なんて当たり前だろう?」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

要は、あなたが種々の報道を見てそこからそのような情報の汲み取り方をしたということでしょう。同じ報道を見て「やっぱり凄い人だ」と思う人や「オレも勉強しよう」と思うに至る人だって無数にいるはずだ(ウチの息子や、会社の同僚達はそういう人間が圧倒的に多い)。あの報道を見てそれが偉人を凡人として扱い、ある種の”冴えない自分”の自尊心の保護や向上心の毀損、あるいは教授本人への敬意を欠いているということしか汲み取れないのであれば、それは貴方のくみ取りのスキルがそこにそのまま表れているという事ではないのか。報道かくあるべし、シカジカの報道の方法が視聴者の内面におけるシカジカの効果を約束する、なんて考えているとすれば、その方がよっぽどおめでたい話であるし、大きなお世話な話であるし、視聴者を愚弄しはいないのか。そして、あなた(小田嶋氏)自身が山中教授や田中耕一氏について、本エッセイで語るという事自体もまた、貴方自身が指摘してみせる「小田嶋氏自身に理解できた(事柄)」という意味での彼らの凡庸性(凡人性)の投影を犯している可能性もまた十分以上にあるでしょう?いいですか?それが特定の人物であれある学問についてであれ、それを著する人や取材する人が誰であれ、それがどれだけ硬い専門書であれ柔らかい低俗雑誌であれ、そこから何を引き出すかは読む人間に託されていることです。そこでは常に正しい読みはなく”誤読”が担保されているのみなのです。その誤読をいかに自分の人生の中で”正しく”活用するか、そのスキルを涵養するほうがはるかに大切です。それは、様々なレベル多様な確度からなるものに、その権威にかかわらず忌憚無く触れ続けるより涵養されることはありません。小田嶋氏が書いていることは、小田嶋氏の読み、でしかない。はっきり言えば貴方のコンプレックスと偏向の発露が多分に盛り込まれた読みの披瀝でしかありません。その読みを、いかに反転させていくかということについてまるで書かれていないから、一個人の凡庸なマスコミ批判の一例以上の域も社会的価値も発揮されていないのです。小田嶋氏が書いていることはそれ自体によって自身が書いていることを体現しているに過ぎません。(2012/10/23)

まず、視聴者様に科学的知識が無さ過ぎます。お馬鹿なことが売りのタレントがもてはやされる時代、そろそろアンチテーゼとして「学問のすすめ」が提唱されても良いのではと思うのですが、なかなか。加えて、ニュースを伝えるマスコミの方々に理数科が少なすぎる(理系は裏方ばかり)。だから、赤っ恥の大誤報が日本中をかけめぐったりするんですよ。世界一の発行部数でしたよね、あの新聞は。(2012/10/22)

違和感を感じる記事です。マスコミの考え方がおかしいかのようなことを書いていますが、結局は「凡人としての天才」を求めているのはマスコミじゃなくて視聴者の人たちでしょ?求める人がいるから、天才のそういった凡人じみたエピソードを発掘し、繰り返す。それが今のマスコミです。多くの人はそれを喜んでいるのであって、筆者氏の感性とは合わないというだけのことではないのですか?ノーベル賞受賞者に限らず、政治家やタレントなど全ての「有名な人」に対して下世話な話を求めているのが今の視聴者なのであり、もしそれが「望んでもないことをマスコミが押しつけている」のであれば、視聴者が集まってNo!と返せば良い。しかし現実は結局その下世話な話を喜んで見ているからマスコミはそれを繰り返すのです。(2012/10/20)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

(日本の住宅政策は)いつまでたっても短期主義から抜け出せない。

長嶋 修 不動産コンサルタント