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物言いは“すべからく”上品に

2012年10月26日(金)

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 橋下徹大阪市長に関する特集記事が掲載された週刊朝日(10月26日号)を、私は、発売日の昼過ぎに入手した。

 購入を急いだのは、ツイッターのタイムラインがちょっとした騒ぎになっていたからだ。

「これは早めにおさえておかないと売り切れになるぞ」

 そう直感した私は、直近のコンビニに走った。
 さいわい、店の棚には最後の一冊が残っている。運が良かったのだと思う。

 周囲には、買いそこねた連中が結構いる。聞けば、翌日の朝には、どこの書店を探しても見つからない状態になっていたらしい。それだけ良く売れたということだ。

 が、話は、売れ行き好調ということだけでは終わらない。
 その後に起こった一連の出来事を考えれば、雑誌が完売したことは、悪夢のはじまりに過ぎなかった。

 なんだか、大仰な書き方になっている。
 昭和のルポルタージュの文体に影響されているのかもしれない。

 怨嗟と情念。夜霧に浮かぶ影のような記憶。こういうものの言い方は、ドサまわりの演歌ショーの司会者の語り口に似ていなくもない。路地の空に屹立する煙突。舗装されていない地面にひろがる錆色の水たまり。この文体は一度身につくと容易に離れない。用心せねばならない。

 文章を書く人間は、様々な文体や人格に憑依されやすい一面を持っている。

 この傾向は、取材力ということの一側面でもあるし、対象に共感するための不可欠な能力でもある。が、憑依されやすい性質は、時に、書き手の人格に危機をもたらす。対象に憑依された書き手は、自分を保つのがむずかしくなる。
 それは、とても厄介なことだ。

 件の連載記事を執筆した佐野眞一氏の文章は、典型的な昭和のルポルタージュの文体で、題材がハマれば、それなりの名文を紡ぐことになるものだ。私は、大好きというわけではないが、いくつかの仕事については高く評価している。でも、今回は、失敗だ。
 
 
 今回は、週刊朝日に掲載された「ハシシタ 奴の本性」という連載記事と、それが引き起こした騒動について考えてみたい。

 読み終わって最初に浮かんだ感想は、
「これは騒動になる」
 ということだった。
 内容もさることながら、語り口があまりにひどいと思ったからだ。

 内容的には、連載第一回のテキストに限って言うなら、特に目新しい材料は記載されていない。いずれも、昨年までの段階で、週刊文春や週刊新潮誌上に載った記事や、「新潮45」の2011年11月号に掲載された「孤独なポピュリストの原点」(執筆は上原善広氏)の中で、既に明らかにされている事柄の範囲内にとどまっている。この先、連載が続けば、あるいはより深い取材の成果が披露されることになったのかもしれないが、少なくとも初回の原稿は、「新潮45」の上原原稿のリライトと呼んでもさしつかえの無い程度のものだった。

 ということはつまり、問題は、書き方、ないしは書き手の立ち位置にあったということだ。

 「ハシシタ 奴の本性」というタイトルがすべてを物語っている。
 喧嘩を売っていると受け取られても仕方のないものだ。
 なにより、品が無い。

コメント47件コメント/レビュー

広告の仕事を過去にしていた関係で、この記事を見たとき小田島さんと同様「校閲は何をしていた?」と感じました。そして校閲がサボっていたというよりも、「これは校閲を通していないな」と、すぐに思いました。一方で、反撃があるのは明らかで、またどう贔屓目に見ても出版社の負けが見えている記事をあえて出したところに、別の意図があるような気もします。民主党が今必死になって通そうとしている人権擁護法案です。この記事がきっかけとなり、社会的弱者の人権を守るためにも擁護法案が必要だという流れを生み出そうとしているかのようだ。またこの件で本来ならば部落開放同盟が大騒ぎしてもよさそうなのに、静観しているのも解せない。この事件は素直に受取れないキナ臭さが漂っているのではないだろうか。(2012/10/29)

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「物言いは“すべからく”上品に」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

広告の仕事を過去にしていた関係で、この記事を見たとき小田島さんと同様「校閲は何をしていた?」と感じました。そして校閲がサボっていたというよりも、「これは校閲を通していないな」と、すぐに思いました。一方で、反撃があるのは明らかで、またどう贔屓目に見ても出版社の負けが見えている記事をあえて出したところに、別の意図があるような気もします。民主党が今必死になって通そうとしている人権擁護法案です。この記事がきっかけとなり、社会的弱者の人権を守るためにも擁護法案が必要だという流れを生み出そうとしているかのようだ。またこの件で本来ならば部落開放同盟が大騒ぎしてもよさそうなのに、静観しているのも解せない。この事件は素直に受取れないキナ臭さが漂っているのではないだろうか。(2012/10/29)

今回も読みごたえがありました。ありがとうございます。橋下氏を揶揄する下品なことばは、「2ちゃんねる」のような裏メディアではよく目にしますが、まともな知性を持っている人間が影響を受けるとは考えられません。今回の事件は、書き手の知性の欠如に由来するのでしょう。(2012/10/29)

ひとの名前を「ハシシタ」とか書く時点で、明らかに周りを不快にさせる悪意に満ちた文章とわかるものです。本来どのような記事であろうと、対象への尊敬・敬意を忘れてはいけないはずなのにね。しかも、部落問題などが絡む内容を特定させて報道に載せるとは、「人権派(笑)」の朝日系列にあって、もうなにがなんだかって感じです。まぁ、朝日だもんなぁ(2012/10/28)

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