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じゃがいもの皮を剥く暇を与えよ

2012年11月2日(金)

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 ハロウィンがケルトの習俗に由来するというお話を、私は、この一週間の間に5回ほど聞かされた。

 同じ話は、テレビでも紹介されていたし、ツイッターの@欄にも流れてきた。ナマの人間によるナマの解説も、二回ほど聴かねばならなかった。

 なるほどケルトでしたか、といった感じで話題を聞き流しながら、私は、唇を噛んでいたと思う。そうしていないと

「うっせえな知ってるよ」

 という言葉が、ノドの奥から飛び出してきてしまうからだ。

 ケルトのお話が無意味な知識だと言っているのではない。いつだったのかは覚えていないが、はじめて聞いた時にはそれなりに感心もした。

 でも、正直なところを申し上げるに、私は、こういう「トリビア」に属するエピソードを誰かに教えてもらうことに対して、かなり以前から、食傷している。

 だって、そんな話は、いまこの場でググれば、いくらでも表示される話で、この話に限らず、もはやその種の「ちょっと耳寄りなお話」は、個人の体験に根ざしたナマの話やネットに上げられていないレアな情報でない限り、誰にとっても、何の意味も持っていないからだ。

 このたった10年ほどの間に、わたくしどもの社会は、他人にものを教えるカタチでしかコミュニケーションを取ろうとしない人間の含有率を飛躍的に高めてきている。その変化に、私は、ちょっと呆然としている。

「公益法人への寄付金が税控除の対象になるって知ってた?」

 誰もが、私にものを教えようとしている。
 私は、 

「だからそれがどうしたんだ?」

 と言い返したくなる気持ちを我慢しながら暮らしている。だから、毎日、眠りに落ちる前に、一日の間に胸の中に溜め込んだ呪いの言葉を闇の中に吐き出さなければならない。

 ツイッターのタイムラインに、フェイスブックのアカウントに、情報は、続々と届けられる。

「知ってる?」
「これ、豆知識なんだけどさ」
「拡散希望」
「お知らせ:来る11月24日。待望のイベントが……」

 見知らぬ人々が、明らかな上から目線で、私に知識をもたらそうとしている。あるいは、彼らは、私のアカウントを通して、自分発の情報を広報しようとたくらんでいるのかもしれない。

 おかげで、私は、ほかならぬ自分の言葉を疑いはじめている次第だ。

「こんな情報が必要なんだろうか」

 そう思うと、タイピングの手が止まる。かくして、この10月のツイート数は、1年ぶりの低水準にとどまることになった。まあ、毎年恒例の秋の無気力月間と言ってしまえばそれまでなのだが、ともあれ、私は、不毛な情報のやりとりにうんざりしはじめているのである。

 今回は、ネット時代の知識と情報について考えてみたい。
 この話は、ほかの原稿の中でも、部分的に何回か触れたことがある。が、きちんと腰を据えて論じたことはたぶん一度もない。こういう話題は、思いついた時に断片的に取り上げるだけでは足りない。一度、きちんと集中して掘り下げないといけない。でないと、いつしか流れ去って、ハードディスクの藻屑と消えてしまう。

コメント38

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「じゃがいもの皮を剥く暇を与えよ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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