• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

人はなぜグラサンで強気になるのか

2012年11月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 遠隔操作ウイルスによる犯罪予告事件で新しい動きがあった。
 「真犯人」を名乗る人物が、いくつかの報道機関や弁護士に当てて、自殺を示唆したともとれるメールを送付してきたというのだ。

 メールが送られたのは13日の夜。間もなく、メールを受け取った人々の反応がツイッターに放流された。

 新聞各紙は、翌朝の朝刊で、早速、このメールを記事化した。なかでも、毎日新聞は「自殺予告メール」という言葉をヘッドラインに使って、比較的大きな扱いで記事を配信した。

 犯人からのメールは、文面を読む限り、たしかに自殺を示唆している。そういう意味では、「自殺予告メール」という見出しは間違いではなかったのかもしれない。

 でも、私はなんだか釈然としなかった。

 犯人からのメッセージに正直に反応するのは、犯人のルールに沿ってゲームを進めることで、それは、とりもなおさず、犯人の側のシナリオに付き合うことを意味しているように思えたからだ。

 この種の「劇場型」と呼ばれる犯罪は、犯人が単独で犯罪を成就しているのではない。

 主役が犯人であることはその通りなのだとしても、劇場を提供しているのは、新聞やテレビをはじめとするマスメディアだ。

 ということは、マスコミは、興行主の役割を果たしている。半分ぐらいは、犯罪の展開にかかわっている。チケットを売ってもいる。

 であるのならば、メディア各社は、「劇場型犯罪」などという他人ごとめいた名称は引っ込めて、「メディア共犯型犯罪」と、実態に即した呼び名で事件を扱うべきなんではなかろうか。

 「脅迫状」や「犯行声明」を伴うメッセージ先行型の犯罪は、メディアを巻き込むことを前提にストーリーを進行させている。逆に言えば、メディアが黙殺すれば、犯行のシナリオが途中で頓挫することもあり得るわけで、そういう意味からしても、報道機関は犯人の挑発に安易に乗るべきではない。

 が、彼らは、ほぼ必ず犯人のゲームに乗る。
 怪人二十面相やルパンIII世の時代(←まあ、フィクションですが)からまるで変わっていない。マスメディアは、予告される事件や、事後報告される犯行声明に目が無い。なぜなら、それらは非常に良く売れるネタであり、また、あたりまえの話だが、とても劇的だからだ。

 さいわい、今回の自殺示唆小芝居メールについての続報は、衆院解散の大波に飲まれてフェイドアウトする流れにある。

 けっこうななりゆきだと思う。
 各社の社会部の皆さんには、ぜひこのままネグレクトしてくださることをお願いしておきたい。

 車庫の中にある列車をまるごとペンキで塗りたくるタイプの愉快犯なども、メディアが報道をしなければ、グラフィティを描くそもそもの動機をツブすことができるテのものだ。

コメント24

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「人はなぜグラサンで強気になるのか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック