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古代ギリシアに繁栄と没落をもたらした競争原理

嫉妬する[7]

2012年12月6日(木)

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妬みと社会的な承認

 このように、ぼくたちの欲望は他者の欲望するものを欲望するという性質をそなえている。妬みというのも、社会的に規定された欲望なのである。ただたんに隣の芝生が青いというわけではない。その社会で価値が高く評価されたものであればあるほど、人々の欲望は激しくなるのである。価値の階層構造が、妬みの性質と激しさを決定すると言えるだろう。

 ということは、妬む心の強い人ほどに、その社会において高く評価されたものを強く熱望するということである。逆に言えば、他者を妬む人は、その社会の価値体系を強く体現しているということになる。妬みはその社会のうちで人々に認められたいという欲望を表現しているものである。社会的な承認を求める欲望だと言えるだろう。

ミメーシスとしての欲望

 というのも、人々は模倣ミメーシスによって初めて、何を欲望すべきかを学ぶからである。ジラールは、「欲望は本質的に模倣的である」[1]ことを指摘した。「欲望は手本となる欲望から写し取られ、欲望はその手本と同じ対象を選びとる」[2]のである。人々が欲望するものは、他者が欲望するものであり、「主体は、ライバルがそれを欲望するがゆえに、その対象を欲望するのである」[3]

 欲望というものは、生理的な欲求とは異なり、他者との関係で初めて成立する。「人間は、自分に欠けていると感じ、他の誰かが備えていると彼にみえるものを、欲望する存在」[4]である。そしてその対象は他者が言葉で示すものではない。他者が手本となってそれを欲望することで、主体はそれが欲望すべきものであることを学ぶのである。

二人のエリス

 この社会的な承認を求める欲望を、他者との競争の刺激として肯定し、これをすべての人が自己の能力を改善するために使わせて、それによって社会全体の水準を高めようとした社会がある。古代のギリシアである。ヘシオドスは、争いの女神エリスには二人の女神がいると主張する。悪しき残忍の女神と、善き嫉みの女神である。善きエリスの働きで、人々は同輩と競争し、みずからの技能を高めてゆくと考えた。ヘシオドスは「そもそも[争いの]エリスは一人にあらず、この世には/二種のエリスがおいでなさった。一つはその本性を知るものは、誰しも善しとするであろうが、他の一つは咎むべきもの」[5]と歌う。

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「古代ギリシアに繁栄と没落をもたらした競争原理」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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