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あってはならないし、なくなりもしないものについて

2013年1月18日(金)

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 体罰の話はあんまりしたくない。
 いくつかの媒体で既に書いていることもあって、どう書いても話が重複するからだ。

 といって、重複を避けるためにあえて角度を変えて書く試みは、ほぼ必ず失敗に終わる。一番おいしい話は既に書いてしまっているわけだし。

 今回は、何度か書き始めて、その度に、アタマの10ラインほどのところで挫折している。

 それでもテーマを変えずに頑固に書き進めてみようと思っているのは、何回か書き直しをしているうちに、「今のこの“書きたくない”という気持ちの中に、問題の解答が眠っている」という直感を得たからだ。

 もっとも、コラムニストの直感は当てにならない。

 とっかかりが見つからない時や、オチを求めてさまよっている時、書き手は、かなりとんでもないところに活路を求める。

 道に迷った雀が煙突の中で死んでいる絵柄を思い浮かべてもらうと良いのかもしれない。
 私は、時々、煙突の中で羽ばたいている。

 というよりも、「活路を求める」タイプのソリューションを採用している時点で、執筆者は、正常な思考法から逸脱している。その意味からすれば、経験を積んだコラムニストが、アイディアに行き詰まった挙げ句に到達する「活路」は、外から見れば、墓穴なのである。
 
 それでもなお、詭弁や奇論珍説に頼ってでも、最後にもう一度だけこの件について書かねばならないと私が思い定めているのは、この度、大阪で起こった体罰による高校生の自殺事件に関連して、巷間で戦わされている体罰論のどれもこれもが、私がツイートした内容も含めて、どうにも空疎に思えるからだ。

 空疎でないにしても、既視感を抱かせる議論ばかりではある。この話題は、もう何年も前から、膠着状態に陥っている。

 おそらく、問いの立て方が間違っている。

「体罰は是か非か」

 という二択問題を掲げた瞬間に、既にして議論は、硬直しているのだ。
 議論に参加しているメンバー自身も、うすうす勘づいている。

「ああ、オレはまた同じ話をしている」
「ほら、お約束の論駁がやってきた」
「また極論だ」
「っていうか、どうしてこの人たちは同じ質問を繰り返すんだ?」
「出た。黄金の建前論」
「そりゃ世界中があんたみたいないい子ちゃんでできあがってるんなら、そもそもこんな話をする必要もないわけでさ」
「キミが強くて男らしいことはよくわかったから、質問に答えてくれないか」

 論敵の反駁が凡庸であることにもうんざりさせられるが、自分が言っていることがまた、誰かがどこかで言っていたことの焼き直しである事実にも、実は、がっかりしている。

 なにより、現職の教諭がほとんどまったくこの議論に参加して来ないことが、体罰論のむなしさを物語っている。

コメント64件コメント/レビュー

この件に関する匿名掲示板上の意見は面白いですね。 「体罰容認派って案外居るんだぁ」って感じです。 個人的には、体罰で矯正しなければならない生徒については、学校側からお断りする制度にすべきだと思います。 つまり、登校拒否というのは、生徒が学校を拒否するケースと、学校側が生徒若しくは、その親を拒否するケースに分けるべきだという事です。 そうすれば、モンスターペアレントによる真面目な教師の消耗は減るでしょうし、暴力で相手を支配する必要も無くなるのではないかと思います。 ま、東京の有名私立で起きたイジメなんかだと、お金が優先してイジメっ子は拒否されないという暗黒の処理がされそうですけどね。 件の教師ですが、個人的にはその指導が特別に優れているとは思えないんですよね。 そもそも、高校の部活なんてのは温度差がありますから、環境がある程度整っていて、毎日練習出来る状態ならば県でそこそこ上位にいけますし、例年上位を保っていれば、それまでよりは資質に恵まれた生徒が来ます。 それらの生徒を鍛えれば、より強くなり、素質的に全国も可能な逸材が来る事になる。 もちろん毎年素質のある子は他の高校と取り合いになるので年毎にバラつくでしょうが、優秀な指導者ならその辺は手腕でカバーするもの。 気合入れるためにビンタなんて意味不明です。 パフォーマンスが悪いなら、スタメンから外すなり、補欠に回すなりすれば良い。 試合に出れなくて悔しいのも、負けて悔しいのも実際にプレーする本人なんだから、本来はその辺を明快に打ち出して実行していればそれで良い。(大体、それだって「何時外されるか」的なプレッシャーで才能が開花出来ない場合だってあるのに) 数十発殴るなんてのはどんな理由をつけようと、自己の嗜好を満たしたいが為のただの暴力だ。 弁護する人が居る方にビックリする。(2013/01/21)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「あってはならないし、なくなりもしないものについて」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

この件に関する匿名掲示板上の意見は面白いですね。 「体罰容認派って案外居るんだぁ」って感じです。 個人的には、体罰で矯正しなければならない生徒については、学校側からお断りする制度にすべきだと思います。 つまり、登校拒否というのは、生徒が学校を拒否するケースと、学校側が生徒若しくは、その親を拒否するケースに分けるべきだという事です。 そうすれば、モンスターペアレントによる真面目な教師の消耗は減るでしょうし、暴力で相手を支配する必要も無くなるのではないかと思います。 ま、東京の有名私立で起きたイジメなんかだと、お金が優先してイジメっ子は拒否されないという暗黒の処理がされそうですけどね。 件の教師ですが、個人的にはその指導が特別に優れているとは思えないんですよね。 そもそも、高校の部活なんてのは温度差がありますから、環境がある程度整っていて、毎日練習出来る状態ならば県でそこそこ上位にいけますし、例年上位を保っていれば、それまでよりは資質に恵まれた生徒が来ます。 それらの生徒を鍛えれば、より強くなり、素質的に全国も可能な逸材が来る事になる。 もちろん毎年素質のある子は他の高校と取り合いになるので年毎にバラつくでしょうが、優秀な指導者ならその辺は手腕でカバーするもの。 気合入れるためにビンタなんて意味不明です。 パフォーマンスが悪いなら、スタメンから外すなり、補欠に回すなりすれば良い。 試合に出れなくて悔しいのも、負けて悔しいのも実際にプレーする本人なんだから、本来はその辺を明快に打ち出して実行していればそれで良い。(大体、それだって「何時外されるか」的なプレッシャーで才能が開花出来ない場合だってあるのに) 数十発殴るなんてのはどんな理由をつけようと、自己の嗜好を満たしたいが為のただの暴力だ。 弁護する人が居る方にビックリする。(2013/01/21)

皆さん書かれていることと重複しますが、私も、法律以前に自己の体験として体罰は容認できません。「子供が悪いことをした時に親が叱る際、思わず手を上げる」というのと、教師の体罰が同じ慈愛に満ちたものだと思えたことはありません。「鉄拳制裁のおかげで、今日の自分はある」という方にもお目にかかったことはありません。 それにしても、今回の主将の子は不憫です。主将を見せしめに殴ることで、チームの士気が上がるはずもなく。挙句の果てにBチームへの降格をちらつかせて脅し、そのうえで、「じゃあ殴られていいんだな」とさらに了解を取る。やくざまがいのやり口です。 懲戒免職は当然のこと、刑事罰を処すべき行為です。 申し開きがあるなら、堂々と出てきて釈明してみろと思います。(2013/01/21)

 小田嶋氏は、この記事を自殺した生徒の遺族に朗読して、張り倒されてみてはいかがでしょうか?(2013/01/21)

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