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あの動画についてやはり触れざるを得ない

2013年2月8日(金)

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 例の「坊主謝罪動画」を見て、第一感で、いやな気分になった。
 憤りや反発というのとは少し違う。
 もっと生理的な次元での忌避感だ。

 昨今の日本映画に時折登場する、過剰にスプラッターな暴力シーンを見せられた時の感じに近いかもしれない。

「なにもこんな姿を晒さなくても……」

 と、案の定、ツイッターのタイムラインに流れてくるコメントにも、冷ややかな感想が目立つ。
 最近の言葉で言う「ドン引き」というヤツだ。

 経緯を振り返っておく。
 発端は「週刊文春」のスクープだ。

 記事は、AKB48と呼ばれるアイドルグループのメンバーである峯岸みなみという20歳のタレントについて、その「お泊まり愛」の一部始終を報じている。

 ついでに言っておくと、男女の同衾を表現するにあたって「お泊まり愛」という幼児語を持ってくる語法に、私は以前から、かなり強い違和感を覚えている。おそらく、出典は、「略奪愛」という一時期流行した言い方からの派生なのであろうが、略奪愛にしてもお泊まり愛にしても、あえて「愛」という言葉を使っている点に、デスクの底意地の悪さが横溢している。

 デスクは、愛の力を信じていない。信じていないからこそ、安易な接尾辞として愛を乱発している。打算愛、惰性愛、事故愛、拾得物横領愛、行きがけの駄賃愛、憐憫愛、送り狼愛、焼けぼっくい愛、なりゆき愛、食い逃げ愛、割れ鍋に綴じ蓋愛……愛をめぐる言葉は、派生すればするだけ、本筋から外れて行く。ということはつまり、新しい愛の用語を発明しているつもりでいる記者諸君は、愛の濃度を薄めている張本人なのである。

 話を元に戻す。
 記事は、峯岸みなみさん(何度も名前を書いて宣伝に荷担するのも業腹なので、以下「M嬢」と省略表記します)の「お泊まり愛」の経緯を詳述するとともに、その彼女の行為が、「恋愛禁止」というAKB48の発足当初からの組織内ルール(「鉄の掟」なのだそうですよ)を犯すものである旨を強調している。ちなみに、AKB48では、過去にも「恋愛禁止」の掟に触れたメンバーが「左遷」された事例がある。つまり、今回の記事には、引き続く処分を促す意味があったわけだ。

 で、記事を受けて、反省したM嬢は、雑誌の発売日の夜、自ら髪を刈った上で、謝罪のメッセージをカメラに向けて語る映像を配信したのである。

 当該の謝罪動画については、配信直後から「20歳になったばかりの女の子が、一夜のうちに、独自の判断で断髪し、謝罪の言葉を自分で考え、カメラ目線の謝罪メッセージ朗読映像を単独で撮影し、その動画ファイルを、自力で、しかもYouTube上のAKB公式チャンネルを通じて配信することが、果たして可能だったのか」という疑問が噴出した。

「自分のところの商品であるタレントが、その商品価値の源泉の一部である髪の毛を勝手に切り落とすことを、芸能プロダクションの社員が手をこまねいて放置していたのはあまりにも不自然だ」

 という指摘もある。
 たしかに、たいして長くもない謝罪メッセージの中に、わざわざ

「先ほど週刊誌を見て居ても立ってもいられず、メンバーにも事務所の方にも誰にも相談せずに、坊主にすることを自分で決めました。」

 という説明の文言が入れられていること自体、不自然といえば不自然だ。
 とはいえ、この部分は、問題の本筋ではない。

 思うに、芸能人が芸能活動の一環として配信している映像に、プロダクションや広告代理店の思惑が反映しているのは、むしろ当然のなりゆきだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「あの動画についてやはり触れざるを得ない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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