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田舎者の国際戦略を考える

2013年3月15日(金)

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 3月14日付の読売新聞朝刊は、「安倍首相、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を15日に表明」という見出しで記事を掲載している。

 一行目を読んで、失礼ながら、笑ってしまった。

 後半部分の動詞の重複に注目してほしい。

《交渉に「参加する」考えを15日に「表明する」方針を「固めた」。》

 なんというまわりくどさだろうか。

 TPP関連の記事は、ずっとこんな感じだ。具体的に言うと

「参加の決意を固めたことを表明する選択肢を検討している」

 だとか、

「周辺が首相に参加の意思表示の明確化を促している件について、内々に反対の意向を伝えた議連は……」

 みたいな、異様にまだるっこしい修辞法が横行しているのだ。
このことは、TPP交渉への参加が、政権発足当初から、既定路線だったことを示唆している。

 つまり、この三カ月ほどは、いつ、どのタイミングで参加の意思を公にするのかについて、関係者が周囲の顔色をうかがっている段階だったわけで、だからこそ、記事の文体は「考え」だとか「「内意」だとか「意向」「決意」「方針」といったあたりの表現を行きつ戻りつせねばならなかったのである。

 で、このたび、訪米を終えた安倍首相が、支持率の高さと株価の上昇基調に力を得て、交渉参加の意思を表明する決意に至ったわけだ

 ちなみに、このニュースは、「春闘の労使交渉において、トヨタ自動車をはじめとする自動車大手が、労働側の年間一時金(ボーナス)の要求に対して、相次いで満額回答を出した」という明るいニュースとセットで配信されている。

 なるほど。首相周辺がこのたびの「参加表明」に関して、ナーバスになっていたことがうかがえる組み合わせではないか。

 思い出してみれば、安倍首相が訪米したタイミングで、新聞各紙は一斉に「TPP参加意思表明へ」という見出しを打っていた。

「なんだ、この《表明へ》っていうのは」
「俗に言う《へ記事》だな」
「そんな言い方があるのか?」
「いま作った。ま、アレだ。新聞辞令の政策版みたいな感じかな」
「どっちにしても地ならし的な記事だよ」
「ってことは、メディアもTPPにはノリノリなのか?」
「だと思うよ。年明け以来、匍匐前進みたいに一歩ずつ前向きな表現を重ねてきたわけだし」

 今回は、TPPについて書く。

 私自身は、TPP交渉への参加が、長い目で見て、わが国にとってプラスになるのかどうか、正直な話、いまだに判断がつかないでいる。有り体に言えば、TPPの是非を判断するに足るだけの知識を持っていないのだ。

 とはいえ、わからないながらも、TPPには、とりあえず反対の立場をとっている。

「わからないくせに反対するのか(笑)」

 と、冷笑する人もいるはずだ。が、

「わからないものには、とりあえず反対しておく」

 という処世は、それはそれで有効な知恵なのだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「田舎者の国際戦略を考える」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト