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ジャパンが日本を野暮にする

2013年3月22日(金)

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 「ジャパン」という文字を見ると、反射的に身構えてしまう。
 たぶん、10年ぐらい前からだ。

 英語の文脈の中に「JAPAN」という英単語が含まれているケースでは、違和感は生じない。でも、日本文の中に「ジャパン」という英単語が混入している場合は、どうしても「あえて言った感じ」が残る。

 「日本」の英語名称である「JAPAN」は、多くの場合、アルファベットでなく「ジャパン」とカタカナで表記されている。ということは、「ジャパン」は、国際社会に向けて発信している体を装いながら、その実、あくまでも日本語話者に向けて語りかけられているわけだ。

 おそらく、「ジャパン」のうさんくささは、「《われわれは海外に向けて情報発信していますよ》ということを国内向けに発信している」という、その錯綜した構造から生まれているものだ。

 別の言い方をするなら、「ジャパン」が体現しているのは、「日本」という国の「状況」や「実態」ではなくて、その「自意識」なのである。

 「クール・ジャパン」は、さらに怪しい。

 個人的には「モボ」「モガ」とか言っていた時代、いや、さらに遡って鹿鳴館根性に立ち戻った感じを受ける。

 でなくても、「クール」というのは、誰かがほかの人間を賞賛する時に用いる言葉であって、本人が自称すべき形容ではない。

 少なくとも私は、自分自身をクールであると評する人間をクールだとは考えない。同様にして、自国のクールさを推進するための会議を設置している国を文化的だとも思わないし、そういう国が、努力の結果、クールに到達できるとも思わない。

 そのクールジャパン推進会議が、このほど、シンボルマークを作成する意向を固めたのだそうだ。

《政府が、日本のアニメやファッションを海外に売り込む「クールジャパン」を推進しようと、さっぱりして、あかぬけた日本人を表す言葉「粋(いき)」を前面に出したシンボルマークを作り、記念コインを製造する準備を始めたことが20日、分かった。政府は平成21年時点で4.5兆円あったアニメやファッションなどの海外ビジネスの規模を拡大し、安倍晋三首相が掲げる成長戦略に結びつけたい考えだ。――略――》(産経新聞 3月21日(木)7時55分配信、リンクはこちら

 言うまでもない話だが、自分たちが「粋」である旨をアピールすることは、「野暮」な態度だ。

 「粋」は、アピールしたり、推進したり、前面に押し出したりするものではない。
 強いて言うなら、そこはかとなく「にじみ出る」ないしは、「醸し出される」ものだ。あるいは、本人が過ぎ去った後に、残り香としてかすかに漂う余韻のような要素だ。決して、記念コインに刻印して配布して良いものではない。

 国の中枢にいる人たちが日本文化を海外に発信したいと思うその気持ちはよくわかる。
 この点について、私は反対しない。

 でも、だとしたら、どうして国は文化行政をないがしろにしているのだろうか。
 私の知る限り、政府は、21世紀にはいってからこっち、文化にかかわる各種の助成金や行政的な支援の枠組みを「仕分け」する方向で動いている。

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「ジャパンが日本を野暮にする」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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