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2013年4月26日(金)

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 23日付けの朝日新聞は、一面のトップで『ユニクロ、「世界同一賃金」導入へ 優秀な人材確保狙う』と題するニュースを配信した。

 で、二面にその解説記事を載せ、三面にはユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長のインタビューを掲載している。

 私は、柳井社長の発言そのものよりも、朝日新聞がこういう紙面の作り方(←具体的には「一私企業のプレスリリースに近い話題のために、一面トップからの3ページを費やす編集方針」ということ)をしたことに、強い印象を受けた。

 というよりも、率直に申し上げて、あきれた。

「朝日新聞は、財界人の提灯を持っていると思われることを恐れなくなったんだな」

 と、ちょうど電話をかけてきた知人を相手に話し込んだほどだ。

 インタビューが載ったのが、「○○経済」「○○ビジネス」のようなタイトルを冠した媒体であったのなら、はじめから何も騒ぐことはない。その種のメディアが、有力企業の経営判断や、経営者の単独インタビューを珍重することは、読者層から言って、ごく自然なことだ。ビジネスの世界に身を置いている人間は、多かれ少なかれ、トップの考え方や経営哲学に関心を払っている。そうでなくても、世界の大きな部分を企業経済が動かしている以上、その活動には、たくさんの読者の注目が集まる。

 インタビューを掲載した媒体が朝日新聞であったことを考慮に入れたのだとしても、柳井社長の言葉それ自体が、特段に大きな問題をはらんでいたわけではない。インタビューは、国際社会に打って出る心構えを持った経営者の発言として受けとめる限り、十分に了解できる内容だった。世界をまたにかけて商売をしようという人間が、強い覚悟を持つことは、むしろ当然の話だ。私自身、野心的な経営を展開している起業家の口から、ぬるまったい、偽善的な人生訓を聞きたいとは思わない。

 ただ、経営者が述べる理想と、現場に反映される現実は、必ずしも一致するものではない。

 その意味で、朝日新聞のようなメディアは、経営者の言葉や企業の広報が配布するプレスリリースを、ある程度批判的にチェックせねばならない。実際にも、これまで、企業経営者が賃金体系について踏み込んだ発言をしたような場合、新聞は、労働側の受け止め方や社会的な影響について、トップの発言とは別の見方を紹介するべく、紙面の中に一定の行数を確保してきた。

 その部分が、今回の記事では、いかにも少ない。

 ユニクロに対して浴びせられている「ブラック企業批判」についても、一応、質問の中に折り込んではいるものの、深く突っ込んでいたとは言いがたい。

 とにかく、この記事を読む限り、朝日新聞は、「世界同一賃金」という柳井社長のプランを、来たるべき時代の指針としてあっさりと容認しているように見える。

 そんなことで良いのだろうか?
 柳井社長は

「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく」

 と言っている。

「グローバル経済というのは『Grow or Die(グロウ・オア・ダイ)』(成長か、さもなければ死か)。非常にエキサイティングな時代だ。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」

 とも言っている。
 なんだかずいぶん昔にはやった歌のようだ。
 朝日新聞は、そういう未来を歓迎しているのか?
 私はいやだぞ。

コメント96件コメント/レビュー

アメリカ企業は日本で本気の商売をするとき、「ローカライズ」に十分な予算をつけますし、さらに日本市場で、日本ユーザー向けに特別な啓蒙活動をして、ユーザー個人ではなく、日本国全体に自社製品の使い方を知ってもらう努力をします。面白いことに、その啓蒙用の教科書のできがよいので、これは日本以外でも役に立つじゃないかと、英訳されてアメリカ市場で自社製品の競争力を高める貴重な武器になったりすることもあるんですよ。私が知っている例では、英語のマニュアルを読んでくれない日本人ユーザー向けに、日本語で懇切丁寧に説明した技術トレーニングの教科書とマニュアルを作ることを日本支社が本社に進言し、最初、本社は「日本人技術者が、そんなに無能なはずはない。そんな教科書が本当に必要なのか」と予算を出し渋ったものの、数年後には、「これは便利だ」と英語はもとより数ヶ国語に翻訳され、本社直轄のプロジェクトに昇格した・・・ なんてこともあります。そういうことを実践できるのが「グローバル企業」なのです。ユニクロは、グローバル企業ではなく、英語かぶれの日本のローカル企業に過ぎません。(2013/05/01)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「24時間戦えるんですか?」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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アメリカ企業は日本で本気の商売をするとき、「ローカライズ」に十分な予算をつけますし、さらに日本市場で、日本ユーザー向けに特別な啓蒙活動をして、ユーザー個人ではなく、日本国全体に自社製品の使い方を知ってもらう努力をします。面白いことに、その啓蒙用の教科書のできがよいので、これは日本以外でも役に立つじゃないかと、英訳されてアメリカ市場で自社製品の競争力を高める貴重な武器になったりすることもあるんですよ。私が知っている例では、英語のマニュアルを読んでくれない日本人ユーザー向けに、日本語で懇切丁寧に説明した技術トレーニングの教科書とマニュアルを作ることを日本支社が本社に進言し、最初、本社は「日本人技術者が、そんなに無能なはずはない。そんな教科書が本当に必要なのか」と予算を出し渋ったものの、数年後には、「これは便利だ」と英語はもとより数ヶ国語に翻訳され、本社直轄のプロジェクトに昇格した・・・ なんてこともあります。そういうことを実践できるのが「グローバル企業」なのです。ユニクロは、グローバル企業ではなく、英語かぶれの日本のローカル企業に過ぎません。(2013/05/01)

名前は忘れてしまいましたが、バブルどころか、まだ高度経済成長時代に、非常に高名なある同時通訳のプロが、「英語を母語としないのに、必要もなく英語をしゃべるたがるような人物はペテン師だ。信じるな。私の言うことも、必ず疑ってくれ。」と、著作のなかで述べていました。あるいは、アイザック・アシモフは、「中世の衒学者は、市民に理解できないラテン語を振り回していた。未来の衒学者は、英語で同じ事をやることになるだろう」とも、言っています。明治から昭和初期にかけて、日本の学者も技術者も、英語やドイツ語の専門用語を日本語化するため訳語を作っていきました(興味深いことに、作りだされた訳語は、ほとんどが「やまとことば」ではなく「漢語」ですが)。外国の知識を消化し、ある個人ではなく日本国全体がが自分のものとして吸収するためには、この概念の翻訳、具体的に言えば、造語という作業を丹念に、国家事業としてなす必要があります。カタカナ語やアルファベットの略称で済ませるようになると、知識は日本社会の共有財産ではなく、企業や役所の私有財産になり、それさえやめて英語で済ませることになれば、外国から持ってきた知識は、もはや、持ってきた個人の私有財産。日本の、英語化を進めたいという自称・国際人は、本当は、国内に「私たちとあいつら」という階層を作って私腹を肥やそうとしているだけで、ガラパゴスがどうのと言った愛国者づらは、ただの仮面に過ぎません。なお、「お前は英語ができないから、そういうんだろう」という攻撃に対して予めお断りしておきますが、私自身は、かつてアメリカの企業で働いたこともあり、英語は、TOEICで940点くらい。英語ができることの利益は、十分承知しています。(2013/05/01)

母国語で学問ができるという点に関しては同意できません。英文の教科書やマニュアルで勉強しなければ世界の一般的な水準から大きく遅れざるを得ません。。少なくともコンピュータ&コミュニケーションの仕事に従事しているとそのように感じます。私も英語で考察すると効率は低下しますがそれよりも豊富な情報にアクセスできる利点のほうが大きいです。(2013/05/01)

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三品 和広 神戸大学教授