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無意味で、だからこそ偉大な

2013年5月31日(金)

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 三浦雄一郎さんが世界最高峰のエベレスト登頂に成功した。
 ただただ驚愕敬服している。

 80歳の人間がエベレストに登るということのとてつもなさは、たとえば、サッカーで言えば、ペレ(72歳)がブラジル代表に招集されてゴールを決めたぐらいな話に匹敵する。野球になぞらえて言うなら、王貞治氏(73歳)が突如現役に復帰して、巨人軍の四番として打席に立って、なんと本塁打をかっ飛ばしましたという感じだろうか。いずれにしても、筆舌に尽くすことのかなわない、人類史に残る快挙だと思う。

 もっとも、登山は、野球やサッカーに比べれば、年齢によって競技力が減退することの少ない営為ではある。それゆえ、この分野では、40代の登山家が20代の若者を圧倒することもそんなに珍しくない。おそらく、瞬発的な筋力や心肺能力よりも、経験値と忍耐力がより大きな意味を持つ世界だからなのであろう。

 とはいえ、80歳でのエベレスト登頂は、それでもやはり、想像を絶する偉業だ。
 30代の男盛りであっても、あの山を登り切ることのできる人間は本当に限られている。日本中を探して歩いてもたぶん十指に満たないはずだ。ということは、山岳競技に世界選手権があったら、三浦雄一郎選手は、齢八十にして日本代表に選出されることになる。そう考えてみると、今回の三浦雄一郎氏の登頂は、かえすがえすも、真に奇跡的な壮挙なのである。

 今回は、山について書こうと思う。

 山を愛する皆さんや、登山の専門家には、あらかじめ謝っておく。私の山岳経験は、ずっと昔の、ごく狭い範囲の往復運動に限られている。のみならず、私の登山観は、おそらく、かなり偏っている。

 それでも、多少とも山に登った経験のある人間は、三浦雄一郎氏の快挙に触発されて、ついつい、山について、生意気を言いたくなってしまう。山には、そういう力がある。なんというのか、これまで、先人が「山は……」「山とは……」と、ハマらない定義を繰り返してきた作業の後追いをしたくなるのだ。

「山は」

 という主語の後ろに連なる言葉は、多くの場合意味を為さない。

「人生は」

 の後段と同じで、「その思いあまりて言葉足らず」という仕儀に陥る。
 それでも、人は、山についてあれこれ断定的なことを言いたくなる。
 それだけ、謎が深いということだ。

 エベレストを最初に征服したのは、公式には、1953年に初登頂を果たしたエドモンド・ヒラリー卿(と、シェルパのテンジン氏)ということになっている。

 しかしながら、そのはるか以前の1920年代に、エベレストの頂上に立った人物がいるという説を唱えている人々がいる。

 真偽はわからない。というのも、登頂を果たした(はずの)ジョージ・マロリー卿は、山頂付近で遭難して、帰らぬ人になってしまったからだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「無意味で、だからこそ偉大な」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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