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統一球でビーンボールを投げてはいけない

2013年6月14日(金)

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 プロ野球の統一球の反発係数が操作されていた件は、既に周知の事実なのだと思っていた。

 私自身は、もはや熱心なプロ野球観戦者ではないが、同世代の知り合いには、仕事に向けるよりも大きな情熱をこめてプロ野球を見ている男が何人かいる。

 その彼らの口ぶりでは、今シーズンからボールが飛ぶようになっていることは、熱心なファンの間では、常識というのか、観戦の前提ですらあったようなのだ。

 たしか、5月半ばごろだったと思うが、ボールについて以下のような会話をした記憶がある。

「オータニもフジナミも去年のボールだったら、もっと思い切ったピッチングができてるはずなんだけどなあ」
「……去年とボールが違うのか?」
「おまえ、気づいてないのか?」
「何が?」
「だからボールだよ。明らかに違うじゃないか」
「そうか?」
「どうせ上の連中がシーズン前に通達を出したか何かで、規格が変わってるんだと思うぞ」
「まさか」
「まさかって、ボールが去年と同じだったら、アベのライトフライがどうしてフェンスを越えてるんだ?」
「なるほど。アベノミクスか」
「ははは。まあ、オレはナベノミクスだと思ってるけどな」
「……」

 私は半信半疑だった。
 でも、毎日野球を見ているファンの目には、ボールの変化は明らかな事実だったようで、実際、テレビ中継の中でも、打球の飛距離については、何回となく話題になっていたらしいのだ。

 とすれば、選手が気づいていなかったはずはない。
 というよりも、そもそも、打球の飛距離に無感覚であるような選手が、プロとしてやっていける道理がないではないか。

 テレビ画面を通じてゲームを見ているだけの一介のファンが気づいている変化を、プロのアスリートたるものが看過するなどということは、論理的に言ってあり得ない。飼っている犬が、ある日アフリカ象の大きさに成長していたことを見過ごし、うっかり踏まれて怪我をした飼い主がいるのだとしても、私は同情しない。そんな人間に犬を飼う資格は無い。

 たとえば、私の父親は木型屋という鋳物の原型を作る木工職人を50年以上やっていた人間だったのだが、当然のことながら、ものの寸法には敏感だった。

 家具でも冷蔵庫でも、ひと目見れば、ほぼ誤差1センチ以内で、幅や奥行きを言い当てることができた。もっとも、父の脳内にビルトインされた物差しは尺貫法の時代に作られたものだったので、持ち出してくる単位は「八寸五分」であるとか「二尺六寸」みたいな長さで、そういう意味では、あまり実用にならなかった。が、ともかく、ひとつの仕事に長年従事している人間には、それなりの感覚が身につくものなのである。

 この度のニュースで私が、一番驚いているのは、日本野球機構(以下NPB)が、選手会に諮ることなく、ボールの反発係数を変更していたことだった。

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「統一球でビーンボールを投げてはいけない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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