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嵐の海で救助された男が述べるべき言葉

2013年6月28日(金)

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 大阪市立の小中学校で今年度から導入された校長の全国公募に応募し、4月に民間人校長として就任した市立小学校の校長が、25日に退職した。

 件の校長は、複数の外資系証券会社に10年以上の勤務経験があるという38歳の男性で、本人は、退職の理由について

《「経験を生かし、英語教育に力を入れたいとアピールしたが、今の学校の課題は基礎学力の向上だった。英語教育に力を注げる環境ではなかった」と説明した。」》(ソースはこちら

 というふうに説明しているのだそうだ。
 校長を「無責任だ」と責めるのは簡単だ。
 事実、無責任ではある。多くの人がそう思うはずだ。
 が、問題の本質は、彼自身の個人な責任感とは別のところにある。

 というのも、そもそも大阪市が、広く民間に人材を求めたのは、「民間出身者ならではの感覚と能力」を期待したからで、その「感覚と能力」には、当然「見切りの早さ」や「決断の冷徹さ」が含まれていたはずだからだ。

 そう考えてみれば、新校長が、赴任3カ月を待たずに、学校の環境と条件に見切りをつけた態度は、まさに民間ならではの機敏さと評価すべきではないか。

 外資系の証券会社は、想像するに、素早い決断が何よりも重視される職場であったに違いない。
 状況の如何に関わらず、いたずらに迷って判断を先延ばしにすることは許されない。
 相場は秒以下の単位で動いている。資金を投入するタイミングを誤れば、利益であったはずの取り引きが逆の結果に終わる。あるいは、損切りの判断がほんの少し遅れるだけで、損失はどこまでも膨らむことになる。

 とすれば、新校長が
「自分の能力を活かせる場所ではない」
 と見るや、即座に撤退に向かったその決断は、非難されるべきポイントではない。

 責任は、むしろ、証券マンを学校に招き入れる決断を下した人々にある。
 彼らは、学校現場に民間並みの機敏な決断と、明確な判断を求めた。
 で、その、敏速な決断が、結果として、現場に混乱をもたらしたのである。

 背景には「成果主義」がある。
 大阪市は、学校の責任者である校長に、「成果」と「責任」を求めようとした。
 「成果」をもとに、白黒のはっきりした「評価」を下し、明確な「責任」を取らせる――そうすることで、官僚的な事なかれ主義に陥りがちな学校現場の停滞に風穴を開けようとしたわけだ。

 意図は理解できる。
 とはいえ、個人的な見解を述べるなら、私は、学校のような場所に「成果主義」を持ち込むことには、疑問を抱いている。
 なぜなら、教育現場は、証券市場がそうであるように「成果」が必ずしも明示的に表れる場所ではないからだ。

 学校の「成果」を計量可能な指標で評価するためには、教育に伴う活動を数値に換算せねばならない。と、具体的には「進学実績」や「スポーツ競技の優勝数」で、学校を序列化することになる。
 これは、当事者にとって、実に容易ならざる事態だ。

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「嵐の海で救助された男が述べるべき言葉」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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