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自分が行った行為の忘却と責任能力

忘れる[9]

2013年7月4日(木)

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交代人格

 さて、多重人格はこのように、自分が直面している困難な状況を忘れるために、心の内部に別の人格を作りだし、その人格に逃避することによって生まれることが多い。その実例を具体的にみてみよう。一九八九年のアメリカ合衆国の調査によると、多重人格の患者は、女性が九割、男性が一割で、圧倒的に女性が多い。主として三〇歳代を中心としており、交代人格の人数は平均して一五・七人にもなる。一人の患者が自分の内部に一五名以上の人格を抱えているのである[1]

 人格の間での健忘の比率は九四・九%と、きわめて高い。別の人格になったときには、他の人格がしたことも、語ったことも忘れているのである。人格の間に、「健忘障壁」が存在していて、他の人格を認識できないようになっている。ただし「幻聴などによって多少とも他方の存在に気づいていることが多い」[2]という。

 交代人格として現れる代表的な人格の典型と比率は次のとおりである。

子供の人格八六%
さまざまな年齢の人格八四・五%
保護してくれる人格八四・〇%
迫害する人格八四・〇%
異性の人格六二・六%
悪魔の人格二八・六%

 保護してくれる人格と迫害する人格がまったく同じ比率で発生することは興味深い。もっとも高い比率の人格は子供の人格であるということは、幼年期に退行することで、心の外傷を忘れようとしていることを示している。異性の人格の多さは、現在の自己と異質な自己へのあこがれを示しているのだろう。しかし一五人もの人格が必要とされるならば、どれがほんらいの自己であると認識されるのだろうか。患者のうちではアイデンティティが粉々になっていることが分かる。

 人格ごとに異なる反応を示す傾向が多いことも、こうした異なる自己への願望の裏返しだろう。交代人格によって、同じ刺激に異なった反応を示す比率は八〇%と高く、特定の交代人格だけで頭痛のような身体症状が発生する比率も七四%と高い。また特定の交代人格だけでアレルギーが発生する比率は二六%、薬の効き方が異なる比率は三五%、アルコールの耐性が異なる比率は四六%、食べ物の好みが異なる比率は三九%。身体的・生理的に別人になろうとしているかのようである。

 「問題行動」としては自殺企図の比率が七二%と高く、実際に二・一%の患者が自殺している。反社会的な行動としては一一・九%が犯罪にかかわっており、一九・一%が娼婦になっており、一二・三%が刑に服していたという[3]

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「自分が行った行為の忘却と責任能力」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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