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イギリス分離派の迫害体験

抵抗する[27] 市民革命の思想(2)

2013年9月19日(木)

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(「抵抗する」のシリーズの1回目は、こちらからお読みください)

イギリスの宗教事情

 激しい宗教戦争を経験してでも、宗教的には教会型のカトリックの制度を維持しようとしたフランスとは異なり、イギリスの宗教改革の特徴は、この三つの類型が複雑に重なりあって存在していたことにある。まずイギリスはヘンリー八世の決定によって、ローマ教会から独立してイギリス国教会という制度を採用することを決定した。ヘンリー八世は離婚して新しい妻をめとりたかったのに、ローマ教会がこれを認めなかったこともあったが、イギリスはローマ教会から離脱して、独自の宗教を採用すること、国王が自国の宗教を規制することを選んだのである。国王の決定によって、国民の宗教が決まるのであるから、イギリスはドイツと同じような完全に教会型の国家であるといってよいはずである。

 しかし国王が決定したからといって国民の心を決定することができるわけではない。イギリスには隣国のアイルランドから多数の国民が移民してきており、彼らは自国のカトリックを信仰している。だから第一の対立軸として、カトリックの信徒と国教会の信徒が対立する。当時のイギリスでは、法律によってカトリックの信徒は公的に職務につくことが禁じられていた。カトリックの信徒は、大陸でのユダヤ人と同じように、二級国民として扱われるのである(ただし国王と下記の高教会派は、国教会の典礼をカトリック化しようと試みることが多い)。

 しかし対立はこれだけではない。国教会の内部にも対立がある。まず国教会の上部を占めているのは、絶対主義の王権と高位の聖職者たちである(これを高教会派と呼ぶ)。このイギリスの国教会の制度は、国王の離婚問題を契機としたことからも明らかなように、信仰心によってローマ教会から独立したものではなかった。そのためにこの国教会制度は、儀礼と典例を重視するものであり、国民の内面的な信仰心はそれほど重視しなかった。国民が教会を訪れ、国の秩序を妨げるようなことをしなければ、それでよかったのである。

 国教会が重視したのは、内面的な信仰であるよりも、外面的な行動であった。これにたいして国教会の内部から改革が起こった。その中心となったのはピューリタン運動の指導者であったトマス・カートライトで、議会に働きかけて、国教会の内部に長老派型の教会制度を採用しようとした。しかし高教会派の反対でこの訴えは失敗に終わり、カートライトは非合法の長老派教会を組織するコンフェレンス運動を展開した。

 カルヴァン派の教義を信奉する長老派は、国民の内面的な信仰を重視した。すでに確認したように長老会は、司牧者とは異なり、聖職者ではない市民たちの内部において、市民たちを宗教的にも道徳的にも指導し、教育する役割を与えられる。長老会は、市民に聖餐に参加させるかどうかを決定する権利を認められることによって、市民たちにたいして道徳的にも宗教的にも大きな権威をふるうようになる。

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「イギリス分離派の迫害体験」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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