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劇的な話こそ無感動に報じよ

2013年10月4日(金)

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 私は、書き出しの一行目にはこだわらない。

 凝った書き出しは、失敗した場合のリスクが大きいし、仮にうまく滑り出せたのだとしても、技巧を凝らした一行目から出発する文章を「あざとい」と感じる読者は、それはそれで少なくないと思っているからだ。

 もっとも、「こだわらない」とは言いつつも、時に、小細工を弄する欲望に抵抗できないわけなのだが、少なくとも、読み手としての私は、あからさまな作為を好まない。この点は一貫している。

 であるからして、

「助けなきゃ」女性は踏切へ 父「やめろ」 JR横浜線

 という見出しには、一瞬、マウスを持つ手が止まった。

「なんだこれは?」

 この見出しは、私の世代の者が考える「ヘッドライン」のスタンダードからかなり大幅に逸脱している。
 なんだかうさんくさい。
 
 新聞の見出しは、ニュースの内容を最低限の文字数で伝えるためのインデックスだ。
 それゆえ、なによりわかりやすく書かれていなければならないし、正確さを保っていなければならない。
 ついでに言えば、定型的であることは必ずしも失点にはならない。むしろ、よく出来た見出しは、月並みに見えるべきなのかもしれない。

 ところが、この日の見出しは、個性的かつ印象的だった。
 出来上がり方から言っても、「ダイジェスト」であるよりは、「クロス・カッティング」ないしは「フラッシュバック」に近い。

 ハリウッド映画の予告編が採用している、印象的なシーンを続けざまに畳み掛けて再生する、あの技法だ。
 ここにおいて重視されているのは、要約の適切さよりも、印象の鮮烈さや、臨場感だ。
 だからこそ、映像喚起的な言葉が選ばれ、肉声に近い(と思われる)登場人物のセリフが抜き出されている。

 こういう手法はなるほど印象的ではある。
 でも、品がないと思う。

 このテの演劇的な見出しは、この10年ほどの間に、目に見えて増加している。
 昨今では、一瞥しただけでは何の記事なのかさえわからない、要約とはかけ離れた見出しが横行している。
 特にネット上のヘッドラインに、その傾向が著しい。
 具体的に言うと、ニュースサイトのトップページに並んでいる見出しは、

「ん? なんだ?」

 と思わせて、記事本文に誘導する狙いで作られているということだ。
 ヘッドラインというよりは、クリック広告の手口に近い。
 あるいは、見世物小屋の絵看板の制作技法、ないしは出会い系営業メールの誘引タイトルに似ているかもしれない。
 いずれにせよ、単なる「要約」ではない。もっと腹黒い何かだ。

コメント72件コメント/レビュー

あの映像を見たとき、信号機のすぐ横に非常警報スイッチがあることを見つけました。もしも、は無意味かも知れませんが、あの女性がその存在に気づいていたら、結果は異なっていたかも知れません。しかし、ニュースでは、「あなたならどうしたか」、という不毛な問いかけだけで、まず非常警報ボタンを押す、という基本に触れた例は見かけませんでした。どんな事件も悲劇も、バラエティショーのネタ感覚しか持ちえない日本の報道には懸念、あるいはそれ以上の軽蔑の念すら感じます。(2013/10/09)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「劇的な話こそ無感動に報じよ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

あの映像を見たとき、信号機のすぐ横に非常警報スイッチがあることを見つけました。もしも、は無意味かも知れませんが、あの女性がその存在に気づいていたら、結果は異なっていたかも知れません。しかし、ニュースでは、「あなたならどうしたか」、という不毛な問いかけだけで、まず非常警報ボタンを押す、という基本に触れた例は見かけませんでした。どんな事件も悲劇も、バラエティショーのネタ感覚しか持ちえない日本の報道には懸念、あるいはそれ以上の軽蔑の念すら感じます。(2013/10/09)

3.11以降、節電ではないが、TV(地上波)は見なくなりました。見たい番組がないというだけですが・・・・特にNHKのニュースは読み手が変わるだけで、原稿は毎回同じです。あの、東北のプロ野球チームの優勝の時はひどかったですね!チャンネルを合わせて、すぐにCSに切り替えました。あれよりももっと最初に報道するべき事柄はあったと思います。そうあのキャスターが出てきてからは特にトップニュースがおかしくなっていると感じます。ニュースもCSの放送で確認しています。こっちのほうも時間帯によっては同じ内容を繰り返し流していますが、国営放送よりもマシです!!踏切事故に関わらず、最近のニュースは「なぜ」がなくなっていると感じています。多くの方が書いていますが、踏切事故も、なぜ踏切内で立ち往生していたかが問題ではないのでしょうか?最近の電車は性能もよくなって、中央快速は高架線の駅間では最高速度に近い100Km/h手前のスピードで走っています。また、西武新宿線の急行も鷺宮以西では105Km/h近くまでスピードを出しています。なので、踏切で立ち往生してしまうとそれは人命に関わってきます。100km/hから非常ブレーキをかけても数百メートルは走ります。今回も200M手前で運転士が発見し、非常ブレーキをかけたが間に合わず、約50M通り過ぎて停止したと報道されていますね。因みに鉄道規則では、最高速度から600M以内で停止しなければならない規定になっています。西武新宿線も駅間に踏切が多い路線です。日常茶飯事のように走行列車の踏切直前横断が発生し、安全確認による遅れが状態化しています。今回の方が之に該当するかはわかりませんが、列車走行の安全性の問題からすれば、列車接近の直前横断は絶対にやめてほしいですね。ただ、開かずの踏切問題などもあり、一朝一夕で解決できないとは思います。末尾に、今回亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。(2013/10/05)

いつもオダジマさんのコラムを読んで「何言ってやんでえ」「そうじゃねえだろう」とヨタを飛ばすのが楽しみなのに、今回は珍しく全面共感しちゃいました。ニュースのワイドショー化が言われて久しいですが最近は特に酷いですね。やたら市民のインタビューで時間をつなぎ(「あくまで個人の感想です」というテロップを流すべきだ)、ニュースの本質も見えず、注意喚起も再発防止もない。「どの踏切にも必ず非常停止ボタンはある、まずこれを押してください」、このことをマスコミは声を大にして言うべきなのに。ちなみに朝のNHKニュースで特集番組みたいな取材ものを延々とやるのもやめてもらえないだろうか。こちらは前日に社会で起きた事実を短時間でできるだけ多く知りたい、と思っているだけなのだ。そう思ってチャンネルを変えると民放では芸能ニュースをやってるのだ。嗚呼。(2013/10/05)

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