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レヴェラーズの限界

抵抗する[33] 市民革命の思想(8)

2013年10月31日(木)

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レヴェラーズと独立派の主張の違い

 レヴェラーズと独立派の主張の違いは明確である。レヴェラーズは、年収四〇シリング以上の所得のある人だけに選挙権を認めるというのであれば、その財産のない人々は「神と自然が己に付与したものを失わなければならない」[1]ことになると主張する。国家にいかなる利害関係ももたないということになるからだ。それでは「イングランド人民にはほとんど自由がない」[2]ということになるのではないか。

 これにたいして独立派は、この普通選挙の問題ではなく、その背後にある自然権がもたらす秩序破壊的な傾向に焦点を合わせて反論する。「君たちはすべての人々が選挙権をもつべきだということを、どんな権利に訴えるつもりなのか。われわれ全員、それを考えてもらいたい。自然権によってか。そのときには、君たちはまたすべての所有権を否定しなければならなくなるであろう」[3]

 独立派のアイアトンは、平等な選挙権はイングランドの実定法によっては根拠づけられないのであり、ただ自然権によってのみ根拠づけられると主張する。しかし自然権を主張すると、「人間は眼にするいかなる物、肉、酒、衣服をも、自らの暮らしのために取ったり、使ったりする同一の権利をもつことになる。土地に対しても、地所を利用したり耕作したりする自由をもつ。すなわち人間は、自らに何らかの所有権ありと考える物に対して、自由をもつことになるのである」[4]というわけである。ここからアナーキーしか生まれないだろうということになる。

自然権の論争

 これはもちろん自然権の考え方を逸脱したところで批判する理論である。自然権としての普通選挙権を主張することは、他人の所有を奪うことを根拠づけるものではない。イングランドの一人の市民として、社会に属する者として、今からみると当然の主張である。社会の一員であることは、その社会に利害関係をもつことであり、その権利は反映されるべきだからだ。

 この自然権の論争がこのように逸脱した形で反論されるのは、その背後に宗教論争があるからだと思われる。信仰の問題であれば、すべての人が自分の良心にしたがって決定することができる。少なくともプロテスタントはそう考える。個人が教会を媒介せずに、神と直接に向き合い、自分の信念を貫くことができるべきであるというのは、ルターの宗教改革の基本的な考え方である。この考え方は、カトリック教会の権威と秩序を崩壊させた。それと同じように、政治と社会の領域で個人の良心の権威を認めると、既存の社会的な権威が崩壊するのではないかと、既得権をもつ者たちは考えるのである。

 この問題にたいしては、イングランドの既存の法的な権限による主張は、弱いのである。こうした既存の法律が目的とするのは、王権にたいして貴族の権利を擁護することであり、すべての個人の基本的な人権を擁護することはではないからである。アイアトンが自然権をイングランドの法に基づいて主張する議論を否定するには、それなりの根拠がある。ここでは、社会契約の理論を提示することで、社会というもののありかたを根底から考え直すことが必要だった。そして社会の既存の財産というものがどのようにして形成されたかを考え、身分的な社会の構造と基礎そのものを批判する論理が必要だった。

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「レヴェラーズの限界」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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