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国王の処刑から革命の終結へ

抵抗する[34] 市民革命の思想(9)

2013年11月7日(木)

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独立派の急転回

 このように軍隊の幹部を中心とする独立派は、議会の長老派や国王との妥協を模索しながら、兵士を軍規によって規制することでレヴェラーズの勢力を殺ぐことに成功していた。しかし国王の逃亡と内戦は、独立派にも皮肉な結果をもたらした。国王が現実的な敵として登場してきたために、それまでの国王との和解と国王の政治的な利用という方針を転換して、レヴェラーズが主張していた国王訴追という方針を採用せざるをえなくなったのである。ただしこれは独立派が共和主義的な思想を採用したということではない。思想的には独立は国王の訴追と処刑を、たんなるマキアヴェリズムとして、情勢に応じた措置として実行するのである。

 軍の独立派は急ぐ必要があった。内戦が長引き、兵士の宿泊と過酷な課税で、ロンドンの民衆は疲弊していた。そしてピューリタニズムは民衆に厳しい生活倫理を求め、遊戯やスポーツを禁止した。「ロンドン市の長老派は、この民衆の不満を軍に対する嫌悪の念に転換するように指導していた」[1]のである。独立派は、国王軍、ロンドンの長老派と平民、軍隊内部のレヴェラーズという三重の「敵」に対処しなければならなくなった。こうして軍の幹部は、レヴェラーズの主張を採用する形で国王を逮捕し、処刑するという道につき進まざるをえなくなったのである。

 これは軍の姿勢の急転回を示すものだった。この背後には、二つの重要な争点をみいだすことができる。一つはすでに指摘したように、ロンドンの大衆層が厳格な生活倫理を求めるピューリタニズムに反感を覚え、国王の権力の回復を求めていたことである。この大衆層の存在は、レヴェラーズにとっても、軍の幹部にとっても悩みの種だった。レヴェラーズの理念とする民衆は、共和制と自由と平等を目指す大衆である。しかし「現実の民衆は、……社会の主体としての人民ではなく、一日のパンのために秩序と安定を望み、伝統的な王位の権威の呪縛の下に国王の復権を望み、盲目的な情念を暴動に発散させる衆愚だった」[2]

 軍の幹部にとっても、この国王の復権を望む「衆愚」は自分たちの権力を崩壊させる重要な原因となりかねない忌まわしい勢力である。それだけではなく、幹部たちは急進的な一般兵士の心もつかむ必要があった。急進的な兵士たちはこれまでレヴェラーズの主張に同調してきたからである。

 このように軍の幹部は、ロンドンの大衆たちと、軍隊の兵士たちの両方を制御する道をみいだす必要があった。それが国王の処刑という道である。国王を処刑してしまえば、ロンドンの民衆たちの願いは断てるだろう。そして兵士たちには、国王を処刑することで、「聖徒の軍隊」という千年王国的な理念を抱かせることができる。クロムウェルは、国王を神と信徒の敵として位置付けることで、一般兵士たちの忠誠を勝ち取ることができると考えたのである。

兵士たちの宗教心

 一般兵士たちは、国王にたいする尊敬の心を無意識のうちに抱いていた。「国王の権威が兵士たちの前論理的な集団心性をも支配していた」[3]のである。それは当時のイングランド国民としてはごくあたり前のことであった。この心性を克服するためには、国王を宗教的な敵として位置付けるしかなかったのである。兵士たちは、国王の「権威の内面的な呪縛から離脱するために、神の権威を必要としたのである」[4]

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「国王の処刑から革命の終結へ」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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