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博覧強記対八面六臂

2013年11月8日(金)

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 大阪のホテルの一室でこの原稿を書いている。

 当地に滞在している理由は、昨晩(水曜日の夜)、市内のとある書店で開催されたトークイベントに登壇者として呼んでいただいたからだ。
 イベントは盛況だった。終了後の打ち上げも、終始なごやかにこなすことができた。

 ところが、ホテルに着いてみると、携帯電話が無い。
 イベント会場の書店に、上着ごと忘れてきたらしい。

 東京を離れると、かなり高い確率で、所持品を失くしたり、忘れてきたりする。
 昔からそうなのだが、旅先でのオダジマは平常心を失う設定になっている。
 ノマド適性が低いのだと思う。

 とにかく、夜が明けたら、書店の開店を待って、ブツを引き取りに行かないといけない。なのに、携帯電話がないと、携帯電話を回収するための連絡さえままならない。ダブルバインドだ。
 というよりも、大げさに言えば、世界とのつながりを絶たれた感じだ。

 電波世界のロビンソン・クルーソー。
 お手上げだ。

 で、仕方なく開店を待つ間、ホテルにとどまって原稿を書いている。
 ところが、うまく執筆のリズムに乗ることができずにいる。
 そんなに繊細至妙な文章を書いている自覚は無いのだが、どういうものなのか、調子が出ない時は筆が進まない。

 おそらく私は、自室の執筆環境に依存している。
 いつも使っているパソコンの扱い慣れたエディタや、ブラウザのブックマークや、各種の辞書や、気晴らしのためのゲームや、逃避先としての紅茶やテレビといった、固有の環境が揃っていないと、アタマが十全に機能してくれないのだ。

 とはいえ、ノマド環境に適応するべく自分を最適化すれば良いのかというと、単純にそうとばかりは言えない。
 マックブックエアでバリバリ仕事ができるようになると、今度はどうせあいつに依存するようになる。私はそういう性質(たち)の人間なのだ。

 持ち歩き用のパソコンやタブレットに依存している人々は、昨今、珍しくない。

 たとえば、昨晩のようなトークイベントに若い世代の登壇者が登場するケースでは、彼らは、まず間違いなくモバイルのパソコンを持ち込んで来て、それを目の前に開いた状態で話を始める。必ずそうするのだ。

 シンポジウムでも、単独の講演でも、公開の鼎談や座談会でも同じことだ。三十代までの若手文化人は、デジタルのガジェット込みの拡張版の自我を介して現実に対応していて、それらのモバイルなエゴのスイッチがオンになっていないと、自分の知的活性力を十全に機能させることができない。だから、彼らは生放送のスタジオにさえ自前のマシンを持ち込む。

 彼らは、場の話題に追随しながら調べ物を続行する能力を備えている。具体的に言うと、口から言葉を発しながら、同時に、手元では資料を並べ直していたりするわけで、訓練の行き届いた人になると、会場のナマの声(ツイッター経由だったりニコ生のコメントだったり)を拾いながら、パワポの資料をスクリーンに展開しつつ、絵柄に沿ったジョークをカマすことができる。おそらく、生まれた時からあのテのマシンと並走してきた彼らのアタマは、デフォルトの設定がマルチタスクになっているのだと思う。

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「博覧強記対八面六臂」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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