• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「偽装」は倫理ではなく思想である

2013年11月15日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 先々週の当欄で触れたエビの出身地や来歴をめぐるゴタゴタは、結局「食品偽装問題」というタグ付きで処理される案件に昇格したようだ。

 たしかに、誤認ないしは虚偽表示による混乱が、エビ周辺にとどまらなかった以上、当今の事態は「食品」全般にかかわる問題として扱われるべきなのだろうし、現場が誤解だ失策だと言い張ったところで、看板と実物が違っていた以上、「偽装」と呼ばれるのは仕方のないところだ。

 とはいえ、私個人は、この「食品偽装問題」という名称には、いまだにしっくりしないものを感じている。

 理由は、「偽装」にかかわった人々が「実態と異なった名称」を掲示していたこと自体はその通りなのだとしても、動機の上で、彼らが、「顧客を騙してやろう」とか「消費者をして優良誤認を抱かしめよう」と考えたいたのかというと、必ずしもそうではなかったと思うからだ。

 たぶん、彼らは何も考えていなかった。
 というよりも、不必要な考察を遮断すべく条件付けられていたのだ。

 彼らは、おそらく、商習慣上、慣例として処理されてきた事例に従って、これまでと同じように前例を踏襲したに過ぎない。

 悪気はなかったのだから食品偽装は免罪されるべきだ、と言いたいのではない。
 みんながやっていたんだから仕方がないだとか、消費者の側にも責任があるとか、一億総懺悔だとか、いまこそ絆を見直そうであるとか、そういうお話をしているのでもない。

 私は、自分たちが、慣例として受け継いでいる動作や手続きについて、疑問を抱いたり、再点検することを、回避する傾向を持った国民だということを申し上げようとしている。

 問題があるとしたら、そこだ。
 われわれは、「いま現にそうである」ことに対して、疑いを持たないように強く動機づけられている。

 たとえばの話、王様が全裸で城下を徘徊するならわしが日常化しているのだとして、王権が絶対である場合、王の行状に疑問を呈したり国王に向かって全裸である理由を問う臣民はあらわれない。というよりも、そういう世界では、王様のフルヌードに言及すること自体が、現有の秩序に対する挑戦と受け止められるはずなのだ。

 わたくしたちが暮らしているのは、一票の格差が2倍を超える設定の選挙で国会議員を選出することを、もう何十年も放置している国だ。
 そういう意味で、わが国の平均的な国民の遵法意識は必ずしも厳格なものではないのであって、それらは、いまさら法が守られていないことに驚いてみせている人々のカマトトぶりと、好一対を為しているのである。

 われわれは、法が適正だからそれを守るのではない。
 処罰が厳格だから法を遵守せんとしているのでもない。
 多くの日本人は、「みんなが守っているから」という理由で法を守っている。
 であるからして、「みんなが守っていない」法律は、時に、軽視される。

 当然の展開だ。
 かかる観察を踏まえて、私は、この度の食品偽装の問題は、遵法精神や倫理の問題であるより、横並び思想の結果だというふうに考えている次第だ。

コメント71

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「「偽装」は倫理ではなく思想である」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

もっと事業を効率化して、料金を下げて、消費者に貢献しないと業界はだめになってしまう。

和田 眞治 日本瓦斯(ニチガス)社長