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タネがなければ、ブランドは生まれない

吉田望さん×岡さん「ブランド」をもう一度語ろう・後編

2014年2月4日(火)

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吉田 望(よしだ・のぞむ)
1956年東京都生まれ。東京大学工学部卒業。慶応義塾大学大学院経営学修士。1980年、電通に入社。電通総研研究部長、電通ドットコム取締役などを経て2000年に退社。ブランド・コンサルタント「nozomu.net」を設立。ウェブ制作会社「concent」取締役。アカウントプランニングの専門会社「takibi」取締役。「transcosmos」社外取締役。朝日ネット監査役。著書に『ブランド』『ブランドII』『会社は誰のものか』など。(写真:大槻純一、以下同)

吉田:僕はクライアントと広告制作者は、ある程度長いつきあいが必要だと思っています。といっても、それは5年か10年のレベルだと思うだけど。

:それは絶対必要なことですね。

吉田:仕事が継続すれば、広告に関わる僕らには、考える時間というものができる。

:11年前に吉田と『ブランド』(2003年)という本を書いたときと、今と比較して、明らかに違うのは、広告ビジネスが今は冷たいビジネスになっていることですよ。広告にしても、クライアントと僕たち制作者の関係にしても、以前はもっと温かいものだったんですよ。

吉田:今は、どっちかっていうと、ぎすぎすと敵意が忍び寄るものになってきている(笑)。

:そういう関係になりつつあるんです。その一例に、競合が多いことがありますよね。

競合とは?

:制作サイドを何者か集めて、アイディアを競わせる。だから僕らにとって競合相手は敵になるし、クライアントはそれを選ぶ者、僕らは選ばれる者に分かれる。

 それは、何かいいものを一緒に作ろう、というスタンスとはまるで違うものです。で、競合して、多数決で意見を聞いた結論の方が「科学的なんだ」ということになっちゃっう。そこにはもう、温かいものは生まれないんだよね。それは、クライアントにとっても、広告制作者にとっても、いいことではないと思うんですよ。

その変化は、いつぐらいから、より顕著になってきましたか。

:いつ、というはっきりした節目はないんだけれど、この10年で明らかに変わってきました。

ゼロ年代を支配する、冷たい方程式

1990年代が終わり、2000年代が始まった。そのゼロ年代の変化でしょうか。

:90年代は失われた10年と言われるけど、それに続くゼロ年代に較べれば、まだましな10年でしたよ。

吉田:とはいえ、やっぱり景気が悪かったので、広告費を使っても成功する確率が基本的に低い時期だったし、そこで企業は次の失敗は許されない、みたいな、すごいプレッシャーにさらされていた。経済が右肩上がりの時期は、そこそこでやっていても当たる、という楽観思想が機能していたんだけど、広告からそれがどんどんなくなってきて、とりわけゼロ年代以降は殺伐としたものになってきたよね。

:社会全体の景気は広告にもろ反映しますね。そんなときは温かくなんてできないよ、と。

 それと、広告代理店のビジネスモデルに対して、クライアントの熱が冷めたということもあると思うんですよ。だって広告って、結局、誰も責任を取らないから。そういう構図が分かってしまうと、「制作する側は、リスクがないじゃん、何だよ」というふうになる。これが冷たさのベースにあるわけです。

吉田:売れても売れなくても、制作側は関係ないからね。

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「タネがなければ、ブランドは生まれない」の著者

岡 康道

岡 康道(おか・やすみち)

クリエイティブ・ディレクター

1956年生まれ。佐賀県嬉野市出身。80年早稲田大学法学部卒。同年、電通に営業として入社。85年にクリエーティブ局へ異動。99年7月クリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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