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動物行動学からみた遊び その1

遊ぶ[3]

2014年1月23日(木)

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動物行動学の目的

 これまでの二回では、主として日本語での「遊ぶ」や「遊び」という言葉から、遊ぶことの意味を考えてきましたが、今回から動物の一つの種である人間にとって、遊びがどのような意味をもつか、動物行動学の観点から調べてみましょう。遊ぶのは人間だけではないからです。

 動物行動学は、動物のふるまいを調べるのですが、その研究の重要な目的の一つは、人間の行動を動物の行動と比較することで、人間の行動の意味を明らかにすることです。わたしたちは人間というものが動物の一つの種であることを忘れて、人間は特殊な生き物であるかのように考えがちです。

 それは「動物」という言葉から、本来は含まれているはずの人間という意味が排除されることが多いことからも明らかです。わたしたちが「動物」というとき、それは人間ではないさまざまな動物、多くの場合は「獣」を意味していることが多いのです。そしてわたしたちは無意識のうちにも、人間があたかも動物と対立する生き物であるかのように考えがちなのです。

 これはたとえば世界文学という言葉と似た使い方ですね。世界文学全集というシリーズが構想されたときには、そこには日本文学は含まれません。それと対立するカテゴリーとして日本文学全集が構想されているはずです。あたかも日本は世界に含まれず、世界と対立するカテゴリーであるかのようです。ときにはアジアという言葉が同じような役割を果たすこともあります。アジアの国といったとき、わたしたちが日本もまたアジアの国であることを忘れがちなのです。

人間動物園

 この動物行動学の観点から人間を観察した秀逸な書物として、動物行動学者で有名なデズモンド・モリスの『人間動物園』があります。モリスはイギリスの動物行動学者で、長年ロンドン動物園に勤務して、檻の中に飼われている動物たちを観察しました。そしてモリスは人間たちを観察しながら、人間たちは実は動物園に飼育されている動物たちときわめて類似した行動を示すことに気付きました。

 それには二つの意味があります。一つは人間は何といってもやはり動物の一種であり、動物として行動するということです。もう一つは、動物園の動物は野生の動物とはきわめて異なる環境のうちで暮らしているために、野生の生き方をしているときには示さなかったようなある種の病的な行動を示すものだということです。そして現代の人間の社会もまた、野生で自然の生き方から著しく逸脱した、かなり病的なものとなっているということです。

 たとえば日本というこの小さな島の中に、実に一億を超える人々が生きているのです。しかも日本は居住できない山地が多いために、その多くが都会の狭い空間に密集して生きているのです。そのために都市で生きている文明化されたわたしたち人間は、野生の生息地で捕獲されて動物園で飼われている動物とおなじような病理に苦しめられているのです。動物園の動物たちは、都市生活を強いられている人間たちの一つの標本のような意味をそなえているのです。

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「動物行動学からみた遊び その1」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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