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ムラの王子、ニューヨークへ行く

2014年1月24日(金)

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 昨年来、動向が注目されていた田中将大投手の移籍先が、ニューヨーク・ヤンキースに決定した。条件は、7年契約で総額1億5500万ドル(約161億円)と伝えられている。

 何と言って良いのやら。
 様々な感慨が錯綜して、うまく言葉が出てこない。

 田中投手個人に対して私が個人の立場で言葉をかけるということなら、話は簡単だ。

「おめでとう」

 と、私は、心からそう言うことができる。

 なにより私は田中投手が、広い世界で自分の力を試したいと思ったその気持ちに共感する。
 アスリートであるということは、挑戦する人間であることを前提としている。
 そういう意味で、田中投手がメジャーリーグの舞台を選んだことは、祝福に値する壮挙だ。

 さてしかし、私は、田中投手のファンであると同時に、日本のプロ野球のファンでもある。
 ファン歴から言ったらこっちの方が長い。

 で、その、かれこれ半世紀近くうちの国の野球を見てきた日本プロ野球の守護者としての感想を求められると、私の言葉は、俄然、歯切れが悪くなるのである。

「さようなら」

 と言った後に、無言の5秒間を書き込まないと正確な感想にならない。

「さようなら……」

 と、なんとも未練たらしい中高年ポエムを謳いあげる始末になる。

 というのも、プロ野球ファンとしてのオダジマは、祝福よりもむしろ惜別の気持ちをより大きく抱いている泣き虫だからだ。もっと言えば、私はそれらに倍する分量の失意に沈んでいたりさえする。

 しかも、この淋しさは、将来への不安につながっている。
 若い人たちが、都会に出て行く流れを止められないことはわかっている。

 が、同時に、過疎の村に取り残されることになる古い世代が、人口の流出を嘆く心の動きもまた、止めて止められるものではない。

 青年にとって、旅立ちは夢の物語であるに違いない。
 が、村に残される年寄りにとって、若者たちの流出は、あまたある喪失のエピソードのひとつであるに過ぎない。

 つまり、この件は、それを観察する立場によって、まるで違って見える出来事だということだ。

コメント37件コメント/レビュー

貨幣価値を踏まえて見直した方がよさそうだね。為替じゃないよ。ドルのやっすい価値と、それを円に単純換算した時の円安効果による額の膨張を国民総下流社会の日本にそのまま当てはめちゃうから、変な事になる。ドル経済を牛耳る1%の目から見たら、金を生むために妥当(もしくはお得な)投資だと判断したから払うのだし、市場規模が違いすぎるがゆえに金銭規模だけは足元にも及ばないが、毎年話題性のある(すなわち投資価値のある)選手を供給してくれる優れた自称「下位」リーグであるNPBが、MLBに対してメンタルでは(威張ってもよさそうなものだが)いつまでも尻尾を振ってついて来てくれる、というこの上ない状況を、日本の選手もマスコミもファンも野球界もいつまでも自主的に保ってくれるんだから、(奴らにしたら)はした金で、おいしい買い物が出来るこの状況はやめられないよね。選手も、世界の檜舞台はもうアメリカにあるわけじゃないくらいの気概がほしい。ふんだくってやるのはこちらだというくらいの目線でやって来ればいいんだと思うよ。(2014/01/27)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「ムラの王子、ニューヨークへ行く」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

貨幣価値を踏まえて見直した方がよさそうだね。為替じゃないよ。ドルのやっすい価値と、それを円に単純換算した時の円安効果による額の膨張を国民総下流社会の日本にそのまま当てはめちゃうから、変な事になる。ドル経済を牛耳る1%の目から見たら、金を生むために妥当(もしくはお得な)投資だと判断したから払うのだし、市場規模が違いすぎるがゆえに金銭規模だけは足元にも及ばないが、毎年話題性のある(すなわち投資価値のある)選手を供給してくれる優れた自称「下位」リーグであるNPBが、MLBに対してメンタルでは(威張ってもよさそうなものだが)いつまでも尻尾を振ってついて来てくれる、というこの上ない状況を、日本の選手もマスコミもファンも野球界もいつまでも自主的に保ってくれるんだから、(奴らにしたら)はした金で、おいしい買い物が出来るこの状況はやめられないよね。選手も、世界の檜舞台はもうアメリカにあるわけじゃないくらいの気概がほしい。ふんだくってやるのはこちらだというくらいの目線でやって来ればいいんだと思うよ。(2014/01/27)

野球は最早日本ではオワコン、他で高い金を出して拾ってくれるのなら、それはそれで選手にも、選手を目指す人間にもハッピーだと思う。野球には興味がないののでファンの心理が分からないだけかもしれないが、何が悪いのか分からない。(2014/01/27)

 田中選手の契約内容がこれほど大きな話題になるのは、日本が格差の小さい平等な国だからだと思いますよ。私などはしみったれた生き方をしていますが、共産党幹部が数百億、数千億円もの蓄財をし、下層階級は貧困の中、基本的人権もないようなお隣の国と比べて、この国に生まれてそこそこ幸せと思っていますがね。 というわけで、私の今回の小田嶋氏のブログに対する感想は「ニグリジブル」です。(2014/01/24)

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