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ネトウヨはオタクに成り上がる

2014年2月14日(金)

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 終わった選挙ほどまぬけなものはない。
 個人的には、過ぎ去った恋愛や汚れつちまつた悲しみよりも始末に負えないと思っている。

 結果の出てしまった選挙は、食べ終わったズワイガニの残骸が、翌朝にははやくも腐敗した匂いを放ちはじめるのとよく似たなりゆきで、落選した候補者の生命力を奪い、死票を投じた有権者の精神に奥深い徒労感を刻印する。わずかに、当選することになる候補者を支持していた人々だけが、つかの間の昂揚感を味わっている。が、彼らの人数は、実は、そんなに多くない。

 圧勝した候補者の場合ですら、その得票数は投票者の半数に届かない。
 ということは、投票しなかった人々も含めた全有権者数を母数として計算しなおしてみると、当選者に票を投じた人間は、全有権者のおよそ4分の1に過ぎない。

 舛添さんにケチをつけようとしているのではない。
 舛添要一新都知事は、正当な選挙を戦って勝利を得た堂々たる当選者だ。私がいいがかりをつけて良い要素は、ひとつもない。

 ただ、選挙というシステムが、少数の勝利者と、多数の敗北者を生むイベントであることに、あらためて感じ入っている次第で、なんというのか、私は例によって意気阻喪しているわけです。

 もっとも、今回の都知事選に関して、私は、選挙前からいくつかの場所で明らかにしていた通り、誰が当選するのかについては、あまり関心を持っていなかった。

 自分の投票先についても同様だ。
 誰に投票するのかを、私はほとんど悩まなかった。
 支持する候補者が明確に決まっていたからではない。

 当選しないことがわかりきっている候補者に票を投じることの意味を、自分なりに承知していたということだ。

 私が投票用紙に書いた文字は、「ひとりごと」のようなものだ。
 ポエムと言っても良い。
 内容は明らかにできない。
 他人のために書いた文字ではないからだ。

 私が注目していたのは、各候補者の最終的な得票数だ。
 誰が当選するのかということとは別に、とにかく私は、誰がどれだけの票を集め、どんな年齢層の人間が、どの候補にどれだけの票を投じるのかを細かく知りたいと考えていた。

 なんとなれば、今回の都知事選は、その当初から、「候補者選び」のための決戦の場というよりは、「やんわりとした意見表明」の場としての意味合いが強かったと思うからだ。

 ちなみに、私がここで言っている、「やんわりとした意見表明」は、最近色々なところで使われている「ふわっとした民意」とはかなり意味合いの違う言葉なので、注意してほしい。

 「ふわっとした民意」は、たぶん何かの形で明らかになった「民意」をおとしめるために、誰かが発明した言葉だ。あるいは、「民意」を騙る人間の思惑を無効化するために工夫された言葉なのかもしれない。

 いずれにせよ、背景には「民意」という言葉の曖昧さがある。
 結局、「民意」は、それを発信した人々ではなくて、利用して何かを成し遂げようとする人間によってよく使われる言葉だということだ。

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「ネトウヨはオタクに成り上がる」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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