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3月の横断幕の向こうに

2014年3月14日(金)

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 3月8日、サッカーJ1浦和vs鳥栖戦が開催された埼玉スタジアムのコンコース内にある横断幕が掲示された。

 横断幕は、最も熱心なサポーターが集うことで知られるゴール裏への通路である209という番号のついたゲートに掲示されていた。写真を見たい人は、「浦和 JAPANESE ONLY 横断幕」ぐらいなキーワードで画像検索すれば抽出されるはずなので、確認してみてほしい。

 横断幕には「JAPANESE ONLY」(←「日本人以外入場お断り」ということ)という文字が大書されていた。

 すぐ隣には大きな日章旗が並列されており、その二つのワンセットの垂れ幕は、大人ならアタマを下げないとぐぐり抜けられない高さに、ちょうど暖簾(のれん)のようなカタチで設置された。

 で、その二つの垂れ幕をくぐりぬけた先には、大きな旭日旗が、スタジアム席の鉄柵を覆うように広げられている。

 こうしてくどくどとゲートの風景を描写しているのは、その日のその場所の景色を、なるべく具体的に思い浮かべてほしいからだ。

 私は、ツイッターに流れてきたこの209ゲートの画像をひと目見た時

「ああ」

 と思った。

「これは、大変なことになるぞ」

 と。

 垂れ幕が深刻なレイシズムの発露であることは、0.5秒で理解できた。
 自分の敏感さを誇っているのではない。
 多少ともサッカーに関わっている人間で、あの画像を見て、1秒以内に「真意」を理解できなかった人間は、職業人として使いものにならない。このことは、ぜひ力をこめて断言しておきたい。それほど、あれは、ヤバいブツだった。

 ところが、この掲示の意味を即座に理解できなかった人たちがいる。
 それも、ほかならぬクラブの関係者の中にそういう人間がいたようなのだ。
 伝えられているところによると、浦和レッズの運営担当者は、試合当日、複数の観客から、当該横断幕が不適切な内容を含んでいる旨の指摘を受けて、その場で、掲示したサポーターグループの人間と話し合いをしたのだそうだ。

 で、結果として、クラブ側は(公式HPの説明するところによれば)、18時04分に、横断幕を撤去している。
 18時04分というのは、当日のゲームが16時04分キックオフであった点から起算すると、試合終了後約20分後ぐらいのタイミングに相当する。

 とすると、これは、「撤去しました」というスジのお話ではない。
 起こっていたことを、ありのままに描写するなら、
「試合が終了して、ほぼすべての観客が退場するまで掲示し続けていました」
 ということだ。

 文体の底意地の悪さに辟易している読者がいるかもしれない。
 たしかに、私はいま、かなりいやみったらしい書き方で浦和レッズ運営の不手際を揶揄している。でも、そうするにはそうするだけの理由があるわけで、私は、クラブの対応に、失望しているのだ。

 数万人が詰めかける観客席の中に、アタマのおかしい人間が座っているリスクをゼロにすることは、誰にもできない。
 大きな人間の集団には、必ず一定数の愚者が含まれている。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「3月の横断幕の向こうに」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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