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人間の文化の根底にある遊びの諸相(3)「遊びと宗教、哲学、文学」

遊ぶ(14)

2014年4月10日(木)

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裁きと謎かけ

 すでに考察してきましたように、人を裁くという行為は遊びと密接な関係があります。これには、ある人の資格を調べるという意味での裁きも含まれていました。王が娘の夫になる資格があるかどうかを調べるために、夫になるべき人に困難な課題を与えて、それをこなせるかどうかを調べるのも、そうした裁きの一つでした。

 神話や童話では、夫となる人は、それをたんなる実力で解決するのではなく、頓智や運の良さなど、ほとんど遊びといってもよいような方法で解決するのでした。そうした課題はそもそも人間の実力で遂行できるものではないので、課題を出された人はそうした人間の能力を越えた課題を実現するためには、実力とは別のものに頼る必要があるのです。そこに裁きの遊びとしての性格が現れるのです。

ヴェーダ文学における謎かけ

 この困難な課題はときに、謎ときという形をとることがあります。とくにインドのヴェーダ文学では、この謎かけと謎ときが、聖なる儀式のうちで大きな位置をしめていることが注目されます。「盛大な供犠の祭りでは、この[聖なる謎かけの]競技が犠牲を捧げる式典と同じくらいに本質的部分をなしている」[1]のです。この儀式で問われる謎は宇宙論的なものです。世界を創造したヴィシュヴァ・カルマンの賛歌は、たとえば次のような謎かけとして歌われます。

 「拠り所はそもそも何なりしや。支点はそも何なりしや。そはいかにありしや。それより一切に拠りヴィシュヴァ・カルマンが、その偉大により地を創造し、天を出現させしめたるものは」[2]。大地を創造した神は何を拠り所にし、何を支点にしたのか。こうした問いは、天地の端緒を問う問いがいかに人間にとって不可避の問いであるかを示したものです。

 カントは『純粋理性批判』において、こうした問いがいかに人間にはそもそも解くことのできない問いであるかを明らかにしたのですが、それでもこうした問いが人間の理性の問わざるを得ない問いであることを強調したのでした。それは人間にとってもっとも深く、避けがたい問いなのです。

 それは「わたしはどこから来たのか、わたしはどこにいるのか、わたしはどこに行くのか」という問いが、人間にとって自己の存在の意味を問い、そして同時に自分の存在の無意味さを自覚させる問いであるのと同じです。

 こうした問いは、人間のもつ知識の空しさと限界を露にするという意味で、哲学的な問いでもあるのですが、それがほとんどつねに、謎として問われるところに、深い意味があります。これは問われた人にはとっては、解くべき謎として、答えるべき問い掛けとして問われるのです。この問いが、その質問の形としては、「謎なぞ」という遊びの形をとっているのはそのためです。

天地創造の謎

 こうした謎には、答えが要求されます。そしてその答えは多くの場合、人間の知識を越えたものとして、宗教的な色彩を帯びます。ヴェーダの別の問いは次のようなものでした。「かの時、有なく、無なく。大空なく、そが上に懸かる天蓋もなく。うごめくは何ぞ。いずこぞ。いかなる助けにぞ。深淵は水よりなれるか」。「その時、死なかりき、不死なかりき。昼と夜との区別さらになかりき。かの唯一者のみ自ら風立てず息づけり。ただそれのみにて他に何一つなかりき」[3]

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「人間の文化の根底にある遊びの諸相(3)「遊びと宗教、哲学、文学」」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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