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あれは「女子力」のイベントだった

2014年4月11日(金)

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 もっとも、感想と言っても、一口サイズの新聞用コメントとは違う。それに、STAP論文についての感想とも違う。「会見」という枠組みから、私が感じ取った雑多でまとまりのない感慨のようなものだ。

 なので、鵜呑みにはしないほうが良いと思う。というのも、これから私が書くテキストは、テーブルに供される完成品のメニューであるよりは、むしろ吐瀉物に近い何かかもしれないからだ。

 会見の冒頭で、私が最初に感じ取ったのは、小保方さんの「女子力」だった。
 会見を見終えて、印象に残っていたのも、同じく「女子力」だった。
 ありていに言えば、それ以外の感想は、特に無かったと言っても良い。

「ああ、この人は女子力でここまでやってきた人だったんだな」

 というのが、偽らざる感慨だったわけだ。
 STAP細胞の成否についての考えはここでは述べない。

 理由は、学問的な部分について、私自身がきちんとした評価眼を持っていないからでもあるのだが、それ以前に、あの会見自体が、STAP細胞をめぐる経緯とは無縁なイベントだったように思えるからだ。

 小保方さん自身、STAP細胞の実現可能性以前の問題について問われていた会見で、論文作成の機微を語る以前の回答を列挙していたわけで、とすれば、私としても、感想以前のコメントを投げ返しておくほかに対処法が無い。つまり、女子力に対しては、オヤジ力で対応するのが、コラムニストの生活の知恵だ、と、そういうお話なのだな、これは。

 ただ、「女子力」は、なかなか厄介な言葉で、これだけ頻繁に印字されていながら、いまだに明確な語義が定まっていない。なんというのか、使う人によって、定義がバラバラなのだ。

 女性誌の文脈では、単に「フェミニンな魅力」ぐらいな意味で使われることが多い。
 が、そのニュアンスは、雑誌ごとに少しずつ違う。

 ハイファッション志向の高飛車な月刊誌が訴える女子力は、モロにファッショナブル寄りな概念ないしは美意識に近いものになっている。一方、芸能ゴシップの追求を主務とする女性週刊誌の中吊りでは「女子力」は、単に「男のコロがし方」を婉曲に表現しただけの言葉であったりする。

 いずれにせよ、女性が「女子力」という言葉を持ち出す際の微妙なニュアンスの違いは、われらおっさんには感知できないことになっている。おなじキャミソールでもフリルがついているのかどうかで女子力の高さは微妙に変わるものであるようだし、女子更衣室や給湯室で発揮される女子力と、会議室やエレベーターで繰り出される女子力は、細胞の分化過程からして、正反対の生成物であったりさえするらしいからだ。

 一方、男の言う女子力は、いたって粗雑な概念だ。

「◯◯ちゃんって可愛いよね」

 が、そのまま

「◯◯ちゃんって女子力高いよね」

 に言い換え可能だったりする。
 端的に、鼻の下の長い評価ポイントに過ぎない。
 語るに落ちる。

 というよりも、たしか、レイモンド・チャンドラーだったかが言っていたと思うのだが、女について男が知っていると思っているあれこれは、どうせウソなのだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「あれは「女子力」のイベントだった」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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