• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

人間の文化の根底にある遊びの諸相(4)「古代ギリシアの悲劇とソフィスト」

遊ぶ(15)

2014年4月17日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

遊びとしての詩

 このように古代の文学も神話も芸術も哲学も、人間たちの生存のための労働からではなく、遊ぶ営みから生まれたと考えることができます。それをもっとも象徴的に示しているのが、他者との違いを誇示する闘技(アゴーン)に生きがいをみいだしていた古代のギリシア人でしょう。古代のギリシア人は、わたしたち日本人とはかなり違うメンタリティをそなえていて魅力的です。

 言語を使う芸術はまず演劇から生まれたというのが、ニーチェ以来の伝統的な考え方ですね。演劇では身振りと言葉を交えて、何かを模倣することが核心となっています。アリストテレスは『詩学』において、詩の起源について「模倣」と「喜ばせること」をあげています。この「詩」というのは、現在に考えられるような叙情詩のようなものではなく、音楽、身振り、言葉を使った総合的な芸術のようなものと考えられています。

 アリストテレスは、詩の技法の第一の原因として、「模倣して再現すること」(ミメーシス)をあげています。「これは人間には子供の頃から自然にそなわった本能であって、人間が他の動物と異なる所以も、模倣再現(ミメーシス)にもっとも長じていて、最初にものを学ぶのもまねびとしての模倣再現(ミメーシス)によって行う点にある」[1]というのです。このまねびとしての模倣再現が、遊びの一種であることは明らかでしょう。

 アリストテレスが人間の定義として、ポリスを形成すること、言語を使うことをあげているのは有名ですが、ここで語っているように、他者の動作を模倣して遊ぶことも人間が動物と異なる重要な特徴(それが人間の定義です)であることはしばしば忘れられているようです。人間は遊ぶ動物である。これがアリストテレスのもう一つの人間の定義です。

 アリストテレスのあげた第二の原因は、この遊ぶ動物としての人間の性格をさらに強調したものです。アリストテレスは「模倣して再現した成果をすべの人が喜ぶということ、これが第二の原因であるが、これも自然にそなわった本能である」[2]と語っているのです。物まねをみて喜ぶこと、それは遊びの重要な特徴です。遊ぶのはほんらいは一人ではなく、二人以上が必要です。片方の人が物まねをして遊んでも、他の人が知らん顔をしていたのでは遊びは成立しません。片方の人が物まねをする、そして他の人がその物まねを楽しんでこそ、遊びが成立するのです。

喜劇と悲劇の起源

 アリストテレスはさらに喜劇が滑稽な物まねから誕生したことを指摘しています。喜劇は古代の民衆たちの祭りから生まれました。この祭りでは、伝説的なサテュロスに扮した役者が、性的な動作と人をからかう言葉を語りながら練り歩くのでした。アリストテレスが「喜劇の方は、今でも多くの国々の所々に風習として残存している下品な祭りの行列の先導者たちから生まれた」[3]と語るとおりです。悲劇も同じように「最初の頃は、詩作はサテュロス劇に似たものであり、舞踊との結びつきもより深かった」[4]と語っています。

コメント0

「中山元の哲学カフェ」のバックナンバー

一覧

「人間の文化の根底にある遊びの諸相(4)「古代ギリシアの悲劇とソフィスト」」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

高齢者に配るお金はあるが、少子化対策のお金はないと言うのは、おかしいでしょう。

小泉 進次郎 衆院議員