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遊びの第一の機能 聖なるものとの交通

遊ぶ(17)

2014年5月1日(木)

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ラブレーとブリューゲルの遊び

 さてこれまで遊ぶという行為について、心理学、動物行動学、歴史学、文化人類学などのさまざまな側面から考察してきましたが、このあたりで遊びの機能と役割について、全体的にまとめてみましょう。

 その際に、遊びについての概念的な考察を補うために、具体的な遊びを手掛かりに考えることにしたいと思います。中世のラブレーの『ガルガンチュワ物語』は、生きることと遊ぶことがそれほど違わなかった巨人のガルガンチュワの生涯を描いた物語です。作者はその序文で「涙よりも笑いごとを描くにしかざらむ、/笑うはこれ人間の本性なればなりけり。/楽しく生きたまえ」[1]と書いているほどです。

 そしてその第二二章には、ガルガンチュワの遊びの数々が列挙されています。岩波文庫版では二一七種類ほどの遊びが挙げられています。残念なことに遊びの名前だけで内容は不明なものが多いのですが、「同色揃え、四枚合わせ」に始まって「幸運、絵札揃え」で終わる遊びの番号一から三五まではカード遊びのようです。「指当て、西洋将棋」に始まって「ぶうぶう、一番二番」で終わる三五から五六までは、ボード・ゲームのようです。「短刀当て、鍵投げ」に始まり、「雲雀鳴き、鼻弾き」に終わる五七から二一七までは戸外での遊びのようです[2]

 これらの遊びのうちで、とくに最後の戸外での遊びに注目したいと思います。戸外で複数の人々が遊ぶ遊びには、遊びの機能についての重要なヒントが隠されていると考えられるからです。それが具体的にどのようなものかは、西洋や日本での子供の遊びの実際から、ある程度は判断することができます。

 とくにブルューゲルの大作「子供の遊戯」は実際の遊びの姿を描いているものとして、ガルガンチュワの遊びがどのようなものだったかを想像するために役立つものです。この絵で多数の子供たちが遊んでいますが、森洋子『ブルューゲルの「子供の遊戯」』では、「お手玉遊び」から「籠をぶらさげる」までの九一種類の遊びが考察されています。

遊びの第一の機能――聖なるものと交通

 遊びの第一の機能として考えられるのは、原初的な儀礼の模倣や反復です。大人たちが聖なるものと通じるために行った儀礼を、子供たちが真似ている遊びがいくつもあります。こうした子供たちの遊びを通じて、もともとの大人たちの儀礼を復元することもできるのです。

 遊びの文化人類学的な考察のところで、中南米のマヤ族の後裔とみられるモパン族の豊年祈願を兼ねた遊びを調べてきました。この遊びは、大人たちが遊びながら、同時に豊年を祈願するという複合的な意味をそなえていました。そしてこの遊びは、共同体全体に豊かな豊作という富が与えられることを祈るとともに、遊びに参加する人々の紐帯を強めるという意味では、共同体の統合に役立っていたのでした。儀式というものは総じて、そうした役割をそなえているものでしょう。聖なる存在との交わりは同時に、その共同体に含まれる人々の世俗的な生の絆を強めるものなのです。

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「遊びの第一の機能 聖なるものとの交通」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官