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所詮、人事はヒトゴトだ

2014年6月6日(金)

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 内閣官房の内部に「内閣人事局」という新しい組織が誕生することになった(ソースはこちら)。

 伝えられているところによると、これにより、首相と官房長官が各府省庁から上がってきた人事案を検討する「任免協議」が制度化され、首相官邸の意向が人事に色濃く反映されることになる。

 新制度では、審議官級以上(約600人)の人事が内閣官房の内閣人事局で一元的に取り扱われることになるようだ。

 安倍政権の特徴のひとつは、人事に多大な関心を払っていることだ。
 NHKの会長人事や経営委員の選考に介入したことは記憶に新しいところだし、就任以来、各省庁の事務次官人事にも積極的に関与している。内閣の憲法解釈にアドバイスする立場である内閣法制局長官の人事でも、これまでの慣例を無視して、外務官僚出身の人物を抜擢する挙に出た。

 今回の内閣人事局の設置も、基本的には安倍首相の人事好きを反映したもので、これまで官僚自身の意思でコントロールされていた各省庁の人事を、首相ならびに官房長官のリーダーシップで執り行おうとする決意と見て差し支えない。要するに、安倍さんは、日本の官僚エリートの任免権を自らの手中におさめようとしているわけだ。

 逆に考えれば、安倍さんは、トップ官僚600人の生殺与奪の権を握ることで、わが国の官僚組織を丸ごとコントロール下におけると踏んでいるのかもしれないわけで、とすると、もしかして安倍さんは、日本という官僚王国に対してクーデターを断行する気でいるのかもしれない。

 私自身は、企業組織で働いた経験の乏しい人間なので、人事がもたらす効果について、いまひとつ理解が届かない。

 誰が誰の上に立って、どんな出自の人物がどの部署のトップに抜擢されるのかといったうわさ話とは、無縁な人生を送ってきたことでもあるし、栄転や左遷や出世といったタイプの言葉について、きちんとした内実のある感慨を抱いた経験も持っていない。

 それだけに、日本の男たちが「人事」のために費やしている情熱とエネルギーの大きさには、いつも驚かされている。

 断続的かつ突発的なアルバイトで食いつないでいた20代の頃、大酒飲みだった私は、そのときどきの勤務先の同年代の社員と、あれやこれやで飲み明かす機会を持つことが多かった。

 そういう時、私以外のメンバーは、はるかに年齢の離れた先輩社員の異動や栄転について、異様なばかりに事細かな分析を加えながら熱心に話しこんでいた。
 その熱心な様子に、私は、いつも面食らったものだった。

「その話、どこが面白いんですか?」

 と、尋ねずにはおれなかった。
 彼らの返事は曖昧だった。

「いや、オレだってこんな話が好きなわけじゃないんだけどな」
「面白いとかつまらないとかじゃなくて、これは、会社勤めをしている人間の病気なんだよ」 「病気というより習性かな」

 いまなら、彼らの言っていたことが多少はわかる。
 おそらく、自分のよく知っている人間の出世レースについての分析や予測は、自分が馬券を買った競走馬の走りっぷりに思いを馳せることよりも、ずっと切実に興味深い娯楽だったのだろうと思う。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「所詮、人事はヒトゴトだ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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