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雨の日のソネット

2014年6月13日(金)

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 雨が降り続いている。
 先週の金曜日以来だから、なんだかんだで6日間連続で降り続けている勘定になる。
 梅雨入りしたとはいえ、これほどの連続降雨は稀有なことだ。

 私の記憶で、雨が多かったといえば、大学に入学した年の夏がそうだった。たぶん1976年のことだ。この年は、梅雨が明けたのか明けなかったのか、とにかくひと夏じゅう、雨模様の天気が続いた。

 おかげで私は体調を崩した。
 体調のみならず、精神の平衡も崩し気味だった。
 結局、梅雨入りから秋口まで、ほとんど家に閉じこもり切りで過ごした。
 苦しい夏休みだった。
 以来、私は、雨を大の苦手とするようになった。

 若い頃は、雨という予報を聞いただけで、気が滅入って行くのをどうすることもできなかった。

 いま、この原稿を書きながら気づいたのは、自分がいつの間にやら、雨嫌いを克服していることだ。

「おお、6日も雨続きなのに、平気だ」

 あらためて振り返ってみるに、40歳を過ぎた頃から、雨に対して特別な反応をすることはなくなった気がする。

 年をとるというのは、ありがたいことだ。
 若い頃にいやで仕方がなかったことの半分ぐらいは、なぜなのか、あまり気にならなくなっている。
 この先、順調に馬齢を重ねて行けば、たぶん死ぬこともそんなにいやなことでなくなるのかもしれない。

 もうひとつ思い出した。

 新卒で入社した会社で、大阪営業部に配属された時、営業部の会報だか組合の印刷物だかに、自己紹介の文章を書いたことだ。例年、新入社員は必ず自己紹介を書くことになっているのだそうで、私のところにも研修の最終日に、原稿依頼(というよりも命令だったわけだが)が届いた。

 言葉の言い回しや細部ははっきり覚えていないのだが、内容としてはおおむね以下のようなことを書いた。

 雨がきらいです。
 傘をさすのはもっときらいです。
 かといって、濡れて歩くのはさらにさらにきらいなので、雨の日は会社を休もうと思うのですが、たぶんそういうのはダメと言われるに決っているから、やっぱり出勤することにします。
 そういうわけなので、雨の日はあんまり話しかけないでください。

 なんと、私は、会社の提出課題にポエムを書いたのだった。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「雨の日のソネット」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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