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「『できない』という生き方があったんだ」といつ気づくか

シーズン5 小石川放浪編・第2回

2014年7月1日(火)

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お2人が通った1970年代の東京都立小石川高校は、旧府立五中時代からの「教養主義」が掲げられ、リベラルな勉学環境が用意されていた……はずでしたが、岡さんと小田嶋さんが導かれた場所は、教室ではなく雀荘でした。

:ははは。

小田嶋:建前としての教養主義を行く道と、その建前ゆえに、ずるけていく形の道とが、ふたつに分かれていたんだよね。

:「うちの高校は受験教育ではなくて、教養主義なんだよ」ということは、僕らにとっては「勉強しなくていいよ」という意味になる。だって「受験の役に立たないかもしれないけど、今はともかく勉強しろ」なんてことは、そもそも無理じゃないですか。

そういう理屈を持った高校生の目の前に、いい感じで雀荘があったんですね。

:物理は出席を取らないから、出ないでいいよね、じゃあ、外に行こうか、と裏門を出たところに、ちょうど雀荘が用意されていた(笑)。

この隣だったらしいです

小田嶋:徒歩にして10数歩。この雑居ビルの2階ね。なつかしいね。おまわりが来るぞ、という情報が来たら3階に避難してね。

:そうそう、ちゃんと避難部屋もあったんだよ(笑)。ただ、大人になって、こうやって思い出すと笑えるけど、でも、やっている時に、高校時代がすごく楽しかったのかというと、そんなことでもないよね。

小田嶋:むしろ苦しいような感じがしたけどね。後で振り返るから、よかったような気がするだけで。

:憂うつでしたよね、毎日。

何が憂うつだったんですか。

悩みの正体は、今考えると進学だった!?

:何だろうな。中学時代だって憂うつだったけど、そのころはまだ、憂うつとか考える権利すら持ってないじゃないですか。

小田嶋:こういうことを認めるのはしゃくだけどさ、やっぱりプレッシャーがあったんだと思うのよ。いい大学に入らなきゃいけない、と心のどこかで思っているんだけど、それが全然実現できないということと、だからって勉強を始めちゃうのも格好がつかないし、ということで、どうにも出口がない感じだったんだと思う。

:そんなくだらないことで悩んでいたと思いたくないんだけど、おそらくそれだよね。友人の自殺とかもあったりして、人間存在の意味とか、自分はもっと抽象的なことで苦しんでいると思いたいんだけどさ。

小田嶋:当時は進学で悩んでいるという自覚はないよ(笑)。

:ないよ。

小田嶋:だから太宰治を読んでいたり、もっと難しいカミュとかを読んでいたりするわけだ。俺は今、すごく抽象的で哲学的な煩悶の中にいる、と本人は思っているんだけど、後々振り返ってみると、受験で悩んでいたんだな、と。

:その割には、あまりにも勉強しなさ過ぎじゃない。

小田嶋:すりゃあいいんだったらするけどさ、でも、勉強しちゃうと格好がつかないんだよね。

お2人とは別に、高校生ライフをちゃんとエンジョイしている人たちだって、いたでしょう。

小田嶋:そういう人たちも全然いましたよ。そういう部分は、クラスによってまるで違っていて、何かと仲良く、一緒にわいわい帰るだとか、ハイキングに行くとか、青春なところもありましたよ。俺は、うらやましがりながら、ばかにして「あそこは青春クラスだからな」なんて言っているわけよ。

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「「『できない』という生き方があったんだ」といつ気づくか」の著者

岡 康道

岡 康道(おか・やすみち)

クリエイティブ・ディレクター

1956年生まれ。佐賀県嬉野市出身。80年早稲田大学法学部卒。同年、電通に営業として入社。85年にクリエーティブ局へ異動。99年7月クリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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