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「ネタ動画」は全てを越える

2014年7月4日(金)

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 憲法解釈を変更する閣議決定が為された翌日の7月2日、ツイッター上に奇妙な動画がアップされた。

 そのおどろくべき映像は、瞬く間に話題を独占した。
 元ネタはテレビのニュースだった。
 当初、私は

「泣き乱しながら潔白主張」

 と題されたその動画のタイトルに違和感を覚えた。

「『泣き乱す』って、そんな日本語あったっけか?」

 と思ったからだ。

 あるいは、そういう日本語があったのかもしれない。調べれば、辞書にも載っているのかもしれない。でも、少なくとも、この国で五十数年暮らしてきた人間である私は、その言い回しを聞いたことがない。とすれば、「泣き乱す」は、ニュース画面のテロップに使う用語としてはいささか不適切なのではなかろうか……などと考えながら当該の動画を見て、私の違和感は吹っ飛んだ。

「誰がね、誰に投票してもぉおお、同じや、同じや思てぇ……わぁあああはあ、この日本んぁぁあああ……」

 といった調子の、ほとんど日本語として意味を為さない号泣と絶叫の混交物に、あえてタイトルを付けるのだとしたら、確かに「泣き乱す」ぐらいな造語が必要であったのかもしれない。

 「泣き崩れる」では弱すぎるし、「泣きじゃくる」でも実態に届かない。「泣き喚く」や「むせび泣く」を持ってきてさえ、あの号泣っぷりを十分に描写し尽くしているとは言いがたい。

 とすれば、「泣き乱しながら」という前例の無い言い回しを使ってみたくなったデスクの気持ちも理解できる。個人的には「泣きぶっ壊れる」「泣き砕け散りながら潔白主張ぉぉおおおお!」ぐらいなテロップをカマしても良かったのではなかろうかと思っている。

 が、大切なポイントはそこではない。
 考えてみてほしい。

 当件は、一地方議員の、経費流用疑惑にすぎない。
 それも、問われているのは、交通費の過大請求だ。

 ニュースバリューとしては、地元ローカル局の枠組みから外に出るはずのない事案だ。
 それが、SNSの世界では、他を寄せ付けないトップニュースになっている。
 バランスを欠いた事態であると申し上げねばならない。

コメント42件コメント/レビュー

もしこの件が立件されても、裁判官が「社会的制裁を十分受けているから」と刑をとっても軽くして“バランス"を取ったりして(笑)。(2014/07/05)

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「「ネタ動画」は全てを越える」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

もしこの件が立件されても、裁判官が「社会的制裁を十分受けているから」と刑をとっても軽くして“バランス"を取ったりして(笑)。(2014/07/05)

野々村某議員のコメントは、結局何だったのか?文字にしたものを眼に出来ない不思議。国語力の低さを詰られると言う福島県警のパワハラ事件があったが、議員でありながら自分の意見を聴き手に分かりやすく伝えると言う政治家としての初歩中の初歩すら実行できない以上、即刻辞職だろうが、そんなニュースも飛び込んで来ない不思議。(2014/07/05)

ちょっとだけ会見の様子を目にしてしまいました。なるほど確かに騒がれたうえに世界で紹介されても仕方ないものでした。昨今テレビでは瞬時に目を引く絶叫シーンが増えたのもマスメディアが分かりやすさを意識した結果なのかもしれません。しかし結局こういう人間が議員をやっていることは、結局国民がツケを払うことになるのですよね・・・。(2014/07/04)

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