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夢の豊かさ

夢をみる(1)

2014年7月24日(木)

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 わたしたちは毎晩のように夢をみますね。でも目を覚ますと、夢をみた記憶だけはあっても、すぐに朝焼けの雲のように消えてしまって、どんな夢だったか忘れてしまうものです。記憶しておこうとするならば、枕元にメモ帳を置いて置いて、まだ覚えているうちに、どんな夢をみたのか、書き留める必要があるのです。

 こうして記録しておくと、夢の情景のうちで、わたしたちは多くのものをみて、経験していることが分かります。その豊富さは、わたしたちの想像を上回るものがあります。それぞれの小さな情景に、象徴的な意味がこもっていることもあります。繰り返し夢にみて、馴染みになった光景もあるでしょう。わたしたちは一日のほぼ三分の一を眠って過ごしますが、その眠りのあいだにもわたしたちの魂は働きつづけ、わたしたちに夢をみせてくれるのです。

古代の夢判断

 古代では夢は神との通路であると考えられました。「彼らは、夢というものは彼らの信じていた超人間的な存在者の世界と関係を持っていて、神々やダイモーンたちのお告げだと頭からきめこんでいた。さらに夢というものはどうやら普通はその夢を見る人にたいしてその人の未来を告げしらせるという大切な役目をはたすらしいと考え始めたのも彼らであった」[1]とフロイトは語っています。

 夢はその夢を見た人の未来を告げるという考え方はギリシアにおいて発達し、それが夢判断という技術を生み出しました(ちなみにフロイトのこの書物を『夢判断』と訳すのは、不適切です。この書物は見た夢で未来を判断するのではなく、夢のうちに現れた無意識的なものを解釈することを目的とするのですから、『夢解釈』と訳すべきでしょう)。

 この技術はやがて廃れて、占星術のような技術の方が好まれるようになりますが、夢がそれを見た人の未来ではなく、過去と現在を告げるのはたしかなことと考えられ、これが夢解釈の研究に結びついたのです。そして夢にはたんに過去や現在につながるだけではなく、芸術と結びついた不思議な力を発揮することがあります。ニーチェはこの力について次のように語っています。

夢と芸術

 「夢の世界を作りだすことにかけては、すべての人間が完全な芸術家である。この夢の世界に描かれる美しい仮象こそが、すべての造型形式の前提であり、それどころか、後に述べるように、文芸の重要な一部でもある。夢の中でわたしたちは事物の形を直接的に理解して楽しむのであって、あらゆる形がわたしたちに語りかけてくる。どうでもよいものとか不必要なものなど一つもない。……芸術的な人間は、夢の現実を精緻に観察することを好むものである。こうした人間は夢にみたイメージから人生の意味を読み取ろうとするのであり、夢に現れる事物によって、生に対処する訓練を積むのである」[2]

 現代の作家で言えば、カフカの小説は夢のような雰囲気をそなえていますね。カフカ自身も日記や書簡に多数の夢を記録しています。ミレナという婚約者には、見た夢を手紙で書いて送るように頼んでいます。カフカにとって夢もまた二人が心を通わせる場だったのでしょうか。カフカの小説には、舞台の急激な移り変わりとか、登場人物の精神的な状態の不可解な変化など、夢を思わせるものが多いのです。

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「夢の豊かさ」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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