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夢の源泉としての身体的な刺激

夢をみる(2)

2014年7月31日(木)

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内的な感覚興奮の刺激

 このように夢の重要な原因は、外的な刺激にあります。外部の音は夢の中に入りこんできて、いわば夢の登場人物になるのです。しかしこれは真の「原因」となるものではありません。たんなるきっかけにすぎないことも多いのです。同じ目覚ましの音が、教会の鐘の音として夢の中に登場することも、タイマーのようなブザーの音として登場することもあります。外部の刺激をどのように「解釈するか」ということは、夢に委ねられているのです。そしてそれをどう取り入れるかということが、夢の手腕でもあります。

 こうした原因は眠っている人の外部から訪れるだけではなく、その内部、すなわち身体から訪れることもあります。こうした身体的な刺激の一つとして、フロイトは「内的な感覚興奮」をあげています。この感覚興奮という概念は少し分かりにくいのですが、身体の器官からくる刺激ではなく、とくに睡眠時における視覚と聴覚の内部から発生する刺激のことが考えられています。ある心理学者は「主観的な視覚ならびに聴覚は、覚醒状態では、瞼を閉じた際の光の混沌として、あるいは耳なりとしてわれわれに知られているものである」[1]と説明しています。

 わたしたちが眼をつぶっても、真っ暗闇になることはありません。瞼が薄いからか、外部から微光がはいってきます。ぼんやりと明るい闇ですね。最初はこの闇は均質なものと思えます。しかしこの薄明るい闇の中で眼を閉じていると、丸い光のようなものが流れてくるのを見ることができます。ふつうはそれほど気がつかないものですが、ぼくは風邪の直りかけの、まだ微熱がある状態に、こうしたものを何度も見たことがあります。

 その時の経験では、橙色から赤色までのさまざまな丸い形の光が、空の雲が高速で風に流されるように、押し寄せてくるのでした。真っ暗なところを光の塊が移動するので、まるで宇宙の誕生のところをみているような圧倒的な感動が押し寄せたものです。こうした刺激によって、「無数の鳥、蝶、魚、真珠、花などがわれわれの眼前に繰り広げられる」[2]ことがあるのです。

 夢の中では、眼球の背景のない暗闇の中でこうした刺激が動くとき、さまざまな動物などの姿をとることは不思議ではありません。フロイトが引用しているこの心理学者は、「夢の中によくありありとあらゆる形の動物が出てくるのはこのためである。そういう動物たちの形が実に種々雑多なのは、主観的な光の夢の特殊な形をなぞりがちなためである」[3]と語っています。

入眠幻想

 このような内部の光の刺激は、「眼の自己光線刺激」[4]と呼ばれています。こうした光のもつ「めまぐるしく交替し、無限に変化することのできる性格は、われわれが夢でみる落ち着きのない形象の流れに正確に対応する」[5]とフロイトも指摘しています。この刺激がもらたす形象は、それが入眠時の幻覚であるために、夢の中に持ち込まれることが多いのです。いくつかの調査では入眠時にみた幻覚が、夢の中でも動物などとして登場することが確認されています。

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「夢の源泉としての身体的な刺激」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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