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夢の仕事――圧縮

夢をみる(4)

2014年8月21日(木)

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夢日記

 夢というものは、ごく短い夢であっても、豊富な内容を含んでいるものです。その内容は、すでに考察しましたように、外的な刺激から生まれることも、体内の内的な刺激から生まれることもあります。そして多くの材料は、その日や数日前の経験したことから提供されるのです。

 そして夢はごく短いものが多いものです。それは夢日記をつけてみるとよくかり分かります。夢というものは、それを見たときにすぐに記録しておかないと、あっと言う間に忘れてしまうものです。しっかり覚えているつもりでも、目覚めてしばらくすると、朝焼けの空に浮かぶ雲のように、ただだいだい色に輝く印象のようになってしまいます。目覚めたときにはとてもありありとしていた夢でも、顔を洗って食事をすませた頃には、淡い印象になってしまっているものです。それをうまく捉えるには、夢をみて目覚めた直後に、書き留める必要があるのです。

 枕元にノートとボールペンをそなえておいて、夢をみるとすぐにそれを記録するのが肝心です。長いと思った夢でもノートの一ページを埋めることはなかなかできないでしょう。起きてすぐに書かないと、一ページを埋めることすらおぼつかないほどです。数行しか書けないこともあるのです。夢はその尻尾をうまく捉えないと、心の奥住に、まるで 蛇のようにするすると潜りこんでしまうのです。

 うまく尻尾をつかまえておけば、その内容をしっかりと記録することができます。それでもたくさんは記録できないでしょう。というのも、夢の内容には、顕在的なものと潜在的なものがあって、夢に登場する顕在的なものは、潜在的なもののごく一部だからです。そのことは、夢を記録した後で、その夢に登場した人物や風景や出来事について連想を働かせてみると明らかになります。目覚めていたときには思いつかないような連想が思い浮かぶものです。その連想が、ある人物や風景に畳み込まれた記憶や印象を引っ張りだして、顕在的な夢の内容の背後に隠れていた潜在的な夢の内容を明かしてくれることが多いのです。

夢の第一の仕事――圧縮

 夢の第一の仕事は、圧縮することです。夢の像には、さまざまな記憶や印象が重ねられているのであり、すべての像は重層的なものなのです。そのことをフロイトがみた夢と分析で確認してみましょう。フロイトはある日、次のような夢をみました。「わたしはある植物(それがどんな植物かは明らかではない)について研究書を執筆した。その本がわたしの目の前にある。わたしはちょうどその本のページをめくって、綴じ込んである一枚のカラーの図版をみた。その書物にはその植物の乾燥標本が綴じ込まれていた」[1]

 これは物書きにとってはごく普通の夢です。本を書くこと、その本ができあがって目の前にあること、それをめくって中をみることなどはごく日常的に行われることです。この夢も自然科学の分野で研究するフロイトにとってはどうということのない夢です。しかしフロイトはこの夢のそれぞれのイメージに多重的に含まれている記憶と観念の系列を、自己分析によってすぐに明らかにすることができました。

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「夢の仕事――圧縮」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師