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夢の仕事――移動

夢をみる(5)

2014年8月28日(木)

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夢の第二の仕事

 さて夢の第一の仕事が圧縮であることは、すでに検討しました。夢で顕在的な内容として現れるものはごくわずかなものであり、わたしたちが記憶している夢はごく短いものが多いのですが、その理由の一つは、このように圧縮されていることにあります。夢に現れる顕在的な内容の背後には潜在的な内容が幾層にも重なっていて、それを剥がすようにしなければ、夢の真意がみえてこないことが多いのです。夢の内容は重層的なものなのです。

 夢の解釈が難しく興味深いのは、このように夢の内容が圧縮されていることによりますが、夢はもっと別の仕事をします。それは夢はその本当に言いたいことを隠すために、夢みる本人に受け入れやすいような内容で語るということです。それをフロイトは「移動」という言葉で表現しています。

 なぜ移動が行われるかということを考えるには、夢は無意識的に見るものでありながら、主体が夢においても検閲をしているということを考える必要があります。夢の主体は、自分が無意識のうちに欲望していることを、夢の中でそのまま表現することを禁じます。そのために夢は本来の姿ではなく、別のものの顔をして主体の欲望を物語るのです。夢のさまざまな要素は主体の「抵抗の検閲をくぐりぬけていなければならない」[1]のです。

換喩と隠喩

 こうした「移動」としてフロイトは二種類のものを考えています。一つは「置き換え」であり、あるものをそれとは違うもので表現することです。もう一つは「ずらし」であり、あるものをそれと似た別のもので表現することです。第一の置き換えは、まったく異なるもののようにみえながらも、二つの概念にそなわる隣接性や近接性に基づいて表現するもので、言語学では換喩という言葉で表現されるものに相当します。

 二つのものがあって、片方がもう一つのものと同時に思い浮かべられることが多いときに、換喩が使われます。アメリカ政府を語るのに、ホワイトハウスというようなものです。アメリカの権力の中心は大統領にあり、大統領はホワイトハウスに住んでいるので、その住居でアメリカ政府の権力の中心を表現するのです。日本政府を東京というときも同じです。星条旗でアメリカ合衆国を示すのも、換喩です。

 第二の置き換えは、類似したもので置き換えるので、言語学では隠喩に相当します。純潔な乙女を白い百合で譬えるようなものです。乙女は純潔である。純潔なものはまったく汚れていない。まったく汚れていないもののは真っ白なものである。白い百合は真っ白である。純潔な乙女は白い百合のようなものである。このように推論はたどります。

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「夢の仕事――移動」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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