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夢の技法(1)――否定と同一化

夢をみる(6)

2014年9月4日(木)

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夢と言語表現

 夢はすでに考察しましたように、圧縮と移動の方法を使って、夢の主体の検閲を逃れながら、その意識にとってうけいれられるような夢の像と物語を作りだすのでした。夢の移動には、換喩と隠喩という言語の二つの比喩の方法が用いられました。圧縮にもまた、こうした換喩と隠喩という言語的な操作が含まれていることは、ある一つの夢の像の中に、どのような像が圧縮されているかを分析してみれば分かることでしょう。類似による隠喩か、ある共通的に基づいた換喩によって、一つの夢の像の中に複数の像が含まれることができるのです。

 このように夢は言語と類似した技法を使います。しかし夢は論理的な記号を使うことができないという点で、言語とは異なります。前回に確認しましたように、論理的な因果関係を「その理由は~だからである」とか「というのは」などという表現で示すことはできません。そこで夢は二つの場面をつなげて、夢の主体にその因果関係を理解させるという方法をとるのでした。これは四コマ漫画などでもよく使われている技法であり、わたしたちもすぐに理解することができるはずです。

対立する感情の表現

 しかしこれよりも表現が困難なのが、否定表現でしょう。夢は「~である」ということは表現できても、「~ではない」という否定記号をつけて表現することはできないのです。「好き」と「嫌い」のような対立する感情の表現は、夢でもすぐにできます。夢をみていて、嫌な気分がする人物は、すぐに理解できます。しかしたしかに「嫌い」は言語的には「好き」の否定表現なのですが、よく考えてみれば、嫌いは「好き」を否定したものではないことはすぐに分かります。嫌いは消極的で否定的な表現ではなく、一つの積極的な感情表現なのです。

 嫌な感じは、好ましい感じを否定した上で、あるいはそれを否定する目的で登場するのではありません。わたしたちにとって嫌いなものは、ともかく嫌いなものとして、感じられるのです。それはわたしたちの生の感情表現であり、何か別の感情を否定するための表現ではないのです。

否定表現

 それでは夢はどうするのでしょうか。フロイトは、それは夢に特有の比較対照的な表現によって実行するのだと考えています。ある思想が一つの要素で表現されているときに、その同じ要素がそれと対照的なものに代えられていることで、あるいはそれと対照的なものに変化することで、思想の否定を表現するのです。

 たとえば夢の中でやさしい母親と思われる女性が登場していたとしましょう。ところがある成り行きの後に、その母親が夜叉のような女性に変身したとします。そのときには、その女性の優しさが否定された上で、残酷さが表現されると考えるわけです。その夢は、「お前が優しい女性であると考えていた女性は、実は残酷な女性だった」と語ることで、夢の主体が最初に信じ込んだその女性の「優しさ」という思想を否定することができます。あるいはその成り行きがその女性の変身の原因だったと考えさせて、その原因を作った夢の主体を咎めることもできるでしょう。ここでは場面の変化が、すでに考察した因果関係も同時に表現することになります。

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「夢の技法(1)――否定と同一化」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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