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空を飛ぶ夢――類型夢(2)

夢をみる(9)

2014年9月25日(木)

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村上春樹の空を飛ぶ夢

 ところで小説家の村上春樹は、ほとんど夢をみないそうですが、ただ一つだけ、ごくわずかに宙に浮く夢をみるそうです。これは河合隼雄との対談で、村上春樹が語っていることで、河合隼雄がすぐに興味深いコメントをしています。引用してみましょう。

 「村上:ぼくも、ただ一つだけ見る夢があるのです。いつも空中浮遊の夢を見るんですが、地面からちょっとだけ浮いているんです。それで、すごく気持ちいいんです。どういうふうにして浮けばいいのか、ちゃんと分かっているんです。だから、いま浮けと言われたら、ちゃんと浮かべそうな気もするんです」

 「河合:空中浮遊というのは、要するに、物語づくりですからね、ちょっと浮いているんでしょう。パーッと一挙に高いところまで昇る夢を見るのは子どもですよ、大人はまずありません」[1]

 河合隼雄のコメントは二つの意味で興味深いですね。一つは空高く昇る夢を見るのは子供だということです。ふつうは大人は世俗のしがらみやら、重力の重荷やらにつぶされて、そんな夢は見ないものらしいです。せいぜい子供くらいだとか(笑)。

 もう一つは、空を飛ぶ夢は、言葉による物語づくりだということです。これはどういうことでしょうか。この夢と言語の結びつきについては日本のラカン派の分析者である新宮一成が興味深い説を提起しています。空を飛ぶ夢は言語の習得の記憶から生まれるというのです。

空を飛ぶ夢と言語

 新宮は人間が言語を習得するということは、現実の世界にたいして空の上から眺めるような超越的な立場に立つことであることを指摘します。言語を話せなかった頃の自分は地べたを這いずり回っていたのに、言葉を習得して、言語空間の中に入るとともに、ある種の全能感を獲得するというのです。

 「言葉を話すようになったとたんに、我々はその[言葉を話せない幼児の頃の]言いようのない経験から離れ、それを想いだすことさえなくなるくらいに、遠くまでやってくる。言葉の雲に乗り、経験の重力から解き放たれた我々の思考は、今や糸の切れた凧のように、自分で自分を生み出し、制御できない速さで動きだす。書き付けたことがすべて本当になってしまうノートを与えられ、全能感に囚われ、我々はあたかも空の高みから世界を見下ろすかのように、今度はすべての経験に、自分から意味を与え、その全体を塗り替えてゆく」[2]

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「空を飛ぶ夢――類型夢(2)」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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