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言論抑圧、主役はあなたです

2014年10月3日(金)

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 帝塚山学院大(大阪府大阪狭山市)に、複数の脅迫文が送付された。
 内容は同大学の人間科学部に教授として勤務する元朝日新聞記者(67)の辞職を要求するものだ(ソースはこちら)。

 脅迫のターゲットとなった元記者は、従軍慰安婦報道を検証する朝日新聞の8月の特集記事で、吉田清治氏(故人)の虚偽証言に関する記事を最初に執筆したとされていた人物で、本人は文書が届いた日に教授を辞職してたという。

 脅迫状は、同じく朝日新聞の元記者(帝塚山大学の教授とは別人)が非常勤講師として勤務する北星学園大学(札幌市厚別区)にも届けられていた(こちら)。

 道警札幌厚別署によると、5月29日と7月28日、学長や学園理事長宛てに「元記者を辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける。釘(くぎ)を混ぜたガスボンベを爆発させる」などと印字された脅迫文が届き、いずれも虫ピン数本が封筒に同封されていたのだそうだ。

 つい先日読了した、その名も『言論抑圧』という新書(中公新書:将基面貴已著)の、まえがきの中に、こんな言葉がある。

《しかし、目の前の現実として発生する権力による言論弾圧とは、権力という「悪」が、「善」としての言論人に力で沈黙を強いる事態だといって済ませられるほど、平板かつ明白なものではない。》(同:P5より)

 たしかにその通りだ。
 言論弾圧の様相は、もしかすると言論の種類以上に多様であるのかもしれない。

 人が何かを言うための手段や方法は、いつの時代も、たいしてかわり映えのするものではない。しかしながら、誰かを黙らせるための手練手管は、工夫次第で、どうにでも進化して行く。とすれば、言論にかかわる人間は、黙らずにいるための方策を、常に研究強化し続けなければならないはずだ。でないと、言論の仕事は、早晩、コンピュータ駆動の記事作成アルゴリズムに取って代わられることになる。おそらく、現状においてさえ、人間の書き手が彼らの能力を上回り得るのは、「編集部の望まない原稿を書きあげる能力」においてのみであるのだろうからして。

 『言論抑圧』は、日中戦争勃発直後の1937年、東京帝国大学教授だった矢内原忠雄という人物が、「国家の理想」という論文を発表したことを引き金に、辞職に追い込まれた事件(矢内原事件)を中心に、当時の言論統制が、どんな過程を経て実体化して行ったのかを跡付けた好著だ。

 新書としては、かなり細かいところに踏み込んだ書物で、その分、読み終えるまでにはそれなりの根気と努力が必要だが、内容は充実している。ぜひ、この連休にでも、手にとって読んでみてほしい。戦前の一時代を凝視する視座から得られる観察は、現代の世相を見る上でも大いに参考になるはずだ。

 本文を読むと、「弾圧」の諸相はなるほど、単純ではない。
 戦争勃発に至る数年の間、作家や大学教授といった言論人の活動に制限を加え、自由を奪いにかかったのは、必ずしも政府当局だけではなかった。

コメント84件コメント/レビュー

脅迫は言論ではありません。その原因を作ったのは元記者です。脅迫を言論にすり替える詭弁に加えて、「一部の賢い人」の邪魔をする「跳ね上がりの素人運動家」と大衆に無知のレッテルを張って議論から排除することこそ言論抑圧ですよ。(2014/10/06)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「言論抑圧、主役はあなたです」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

脅迫は言論ではありません。その原因を作ったのは元記者です。脅迫を言論にすり替える詭弁に加えて、「一部の賢い人」の邪魔をする「跳ね上がりの素人運動家」と大衆に無知のレッテルを張って議論から排除することこそ言論抑圧ですよ。(2014/10/06)

ここにコメントしているかなりの人は,菅義偉官房長官でさえ,10月3日の衆院予算委員会で「慰安婦」問題で日本軍の関与と強制性を認め謝罪を表明した「河野官房長官談話」の作成過程に関し「吉田清治氏の証言は客観的事実と照らしてつじつまが合わなかった。他の証言者の証言と比較して信用性が低かったことから『河野談話』に反映されなかった」と述べていることを知らないようですね。「慰安婦」問題について日本に責任があることは今の日本政府自身が認めています。「慰安婦」問題をねつ造扱いする人こそ,産経を始めとするマスコミに踊らされすぎでしょう。(2014/10/06)

「そんな前歴を持つ元記者を教授にした大学は批判されて当然」「特定の政治思想を持つ人を雇うのはおかしい」という意見には強い違和感あります。 そういう批判するのであれば、政党と強い関係を持つ宗教団体が経営している大学を批判する方が先ではないですか。  それに学生にせよ、その両親にせよ選択の自由はあるのです。信頼に値しないと思えば入学しなければ良いだけのこと。 自ら選択して入学した学生に対するカリキュラムを批判する権利は、学費を払っている学生・両親と、管轄責任のある文科省だけでしょう。 子供を入学させてるわけでもなく、資金を出しているわけでもない人間に圧力かける権利があるとは思えません。(2014/10/06)

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