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フロイトのエディプス・コンプレックスの発見(3)

夢をみる(15)

2014年11月6日(木)

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いなくなった母の記憶

 この乳母と母親に関連して、さらに別の記憶が想起されたことを、フロイトは同じ手紙で書いています。フロイトには、二五年も前から記憶に残っていて、その意味が理解できない場面があったのです。それは「母がみつからず、ぼくは絶望して泣き叫んでいます。兄のフィリップ(ぼくより二〇歳年上)がぼくのために洋服ダンスを開けます。そしてその中にも母はいなかったのです。彼女がすらりとした美しい姿でドアから入ってくるまで、もっと激しく泣いています」[1]という記憶です。これは何を意味しているのでしょうか。

 まず兄のフィリップとフロイトの関係を確認しておきましょう。フロイトの父親と母親は、かなり年齢が離れた夫婦です。父親ヤーコプは一八一五年生まれで、一度離婚していて、ジグムントの母親は二度目の妻です。最初の結婚は一七歳のときで、最初の妻との間に二人の息子がいました。それが一八三二年頃に生まれたエマヌエルと一八三六年に生まれたフィリップです。父は四〇歳のときに、フロイトの母親になるアマリー・ナターンゾーンと再婚しました。一八三五年生まれの彼女は、夫よりも二〇歳年下です。ずいぶんと年齢が違いますね。前の妻との間で生まれた二番目の息子のフィリップとほとんど同い年です。

 ところで問題となるフロイトの乳母は、もう高齢の女性でした。そこでジグムントにとっては、二組の夫婦が、二組の両親がいるように思えたのです。もはや老人にしかみえない自分の父親と自分を育ててくれる乳母が夫婦にみえました。一方では、若くはつらつとしているアマリーとフィリップが夫婦にみえました。ところが現実には父親とアマリーが夫婦なのです。伝記でジョーンズは「フィリップではなく、ヤーコプがアマリーと同じ寝床に寝るというやっかいな事実があった。これはまったくもって途方に暮れることであった」[2]と語っています。

 幼いフロイトにとって、母親はアマリーであって、乳母は祖母のような地位にあります。そして父親はフィリップのようであり、実際の父は祖父のようでもあります。フロイトにとってはフィリップは父の地位にあり、母であるアマリーを独占する夫の地位にふさわしい人間なのです。そして幼いフロイトは、母の夫のような地位にあるフィリップに嫉妬を感じています。フロイトにとってまるで父親が二人いるようなものです。エディプス・コンプレックスも二倍になったのでしょうか。

 この記憶ではフロイトは、母親が不在で寂しいので泣いているのです。フロイトは母親が死んだのではないか、あるいは自分を置きざりにして、どこか遠いところに行ってしまったのではないかと恐れているのです。すると父親のようなフィリップがフロイトにタンスの扉を開いて見せてくれます。幼いフロイトは母親がタンスの中に隠れているか、閉じ込められていると信じていたので、開いて見せてくれと、兄に頼んだわけです。

乳母の「ひどい扱い」

 その背景には、例の乳母にまつわる物語があります。乳母はフロイトに性的な快楽の手解きをしたのですが、ほかにもいろいろと問題がありました。前の頭蓋骨の夢の続きで、乳母は「先に自分のからだを洗った赤味を帯びた水でぼくを洗ってくれました」[3]とフロイトは語っています。乳母は、自分が入浴してすっかり汚れてしまった水でフロイトのからだを洗ったわけです。次に乳母は、「ぼくを唆して、ツェーナー貨幣を彼女にやるために盗ませました」[4]とも、フロイトは語っています。乳母は自分の小遣いにするために、フロイトに両親から金を盗ませたということになります。

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「フロイトのエディプス・コンプレックスの発見(3)」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官