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山道で、二度と登るもんかと考えた

2014年12月5日(金)

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 約25年ぶりに山に登ってきた。

 あえて山と力説するほどの高みでもないのだが、久々に登る者にとっては、どんな山でも山は山だ。

 現場は、丹沢にある三つ峠というところで、標高は1760メートル。富士山の眺望が素晴らしいことで名高い峰なのだそうだ。

 登った理由はありていに言えば知り合いに誘われたからなのだが、それだけでもない。
 ひとつには、選挙前後のギスギスした空気が苦手だということがある。
 こういう時は、下界から逃げ出したくなる。

 もうひとつの理由は、年末を控えて、仕事のスケジュールがドミノ倒しの状況を呈しているからだ。
 そういうタイミングで誘われると、行き先がどこであっても私は断ることができない。そういう性質なのだ。

 忙しいと、余計なことをしたくなる。試験期間がはじまる度になぜなのか『カラマーゾフの兄弟』を再読していたのと同じ力加減だ。
 この性質は死ぬまでなおらない。

 山行は、ただただ、キツかった。
 要約すればこの5文字で足りる。

 カラダがナマっていることは知っていた。
 不要な分の体重が重荷になるであろうことも予期していた。

 が、それにしても、自分がこれほどまでに歩けない人間になっていることには思いが及んでいなかった。
 私は、自分にとって自分が重荷であることを、自分の肉体を山頂に運び上げる仕事をしてみてはじめて、体感として理解したわけだ。
 バカな話だ。
 
 歩き始めて5分ほどで、後悔がはじまった。

「来るんじゃなかった」
「軽率だった」
「いまならまだ引き返せるだろうか」
「むしろ早めに脱落した方が同行者にかける迷惑を極小化できるのではないか」
「それにしてもこの不快な勾配は何だ?」

 登山開始30分後には、心底からうんざりしていた。

 山道の両側に広がる空々しい景色に、下山してくる登山者がかけてくる親しげな挨拶の言葉に、路傍の石に、自分の汗に、私は立腹していた。そして、こんな場所にわざわざやってきた自分の決断の軽忽を憎み、さっさと引き返せば良いところを要らぬ見栄を張って登り続けている自分の意志の弱さに苛立ち、自分たちを追い抜いて行く後期高齢山ガールの軽快な足取りを呪っていた。

コメント41

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「山道で、二度と登るもんかと考えた」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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